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2021.06.03 エコノミスト・ストラテジスト・レポート ~鳥瞰の眼・虫瞰の眼~

コロナ禍終息で暗号資産は受難の時代へ

ビットコインなど暗号資産の価格上昇に変化の兆しが出ている。背景は2つあると考えられる。

1つは米国の実質金利の下げ止まりだ。その背景はワクチンの普及による米国経済の正常化だ。暗号資産は株式と違い株価収益率(PER)や純資産倍率(PBR)など価値を相対比較する基準がない。従って、価格の変動は貨幣の代替として中央銀行に対する信認を反映するとも考えられていた。しかし、下図のように実質金利との連動が強い事実からすれば、分散投資対象のオルタナティブ資産に位置付けられていると考えられる。この実質金利が左図のように下げ止まりつつあるのだ。

もう1つは中国が2021年5月に発表した規制強化だ。もともと中国では暗号資産の取引は禁止されている。しかし、新たに採掘すれば暗号資産の所有者になれる。そして、海外のネット取引所で売却すれば対価を得られる。今回の規制は新規採掘のルートを遮断することに主眼が置かれている。中国は電力料金が安いため、採掘に大量の電力を消費するビットコインの採掘が集中していた。

この2つを受けてビットコインの価格は6万ドルから3万ドル台へと急落した。暗号資産の合計の市場規模はピークで約2.5兆ドルだったので約1兆ドルが消失したことになる。世界の株式時価総額が約109兆ドル(World Federation of Exchanges)なので、世界的な株価の下落幅に直すと約1%弱と同等だ。暗号資産の急落が世界の株式相場に悪影響を与えることも懸念されたが、限定的だった理由はこの相対的規模感にあると考えられる。イーロン・マスク氏の派手な言動など暗号資産の相場を動かした要因は他にもあるが、本質的なものではないだろう。

中国が暗号資産の規制を強化した背景は、米国より先行したコロナ禍からの経済正常化だ。経済の正常化に伴い、景気対策は打ち切られ、企業の破綻が増加している。企業破綻の増加で今後は金融機関の不良債権も増加すると見込まれている。特に今後は、中国でバブル崩壊が懸念されながら弾けなかった最大の要因である政府の暗黙の保証があると見られている資産に、本当に保証があるのかどうかが試される可能性がある。代表例は華融資産管理だ。中国人が資産防衛で過敏になるのも無理はない。中国では資本逃避を防止するため厳格な資本規制が導入されている。しかし、土日でも夜中でもPCがあれば海外と取引できる暗号資産は、金融機関を通じる資本規制の対象外にある。中国の規制強化は、暗号資産を通じた資本逃避に対して先手を打って阻止したものと理解すべきだろう。

中国の一連の動きは新興国の先行事例になると位置付けられる。IMFが主導する新興国の債務返済を猶予する債務返済猶予イニシアティブは2021年12月が期限だ。コロナ禍を理由に6ヵ月ほど延長となる可能性はあるが、ワクチンの普及でコロナ禍の終息が展望できるようになれば、最終的な期限が視野に入って来る。このためいくつかの新興国は増税など債務返済に備えた経済政策を打ち出し始めた。しかし、これが前途多難だ。たとえばOECD加盟国であるチリでは、増税を打ち出した現政権に対する国民の反発が強く、政権交代が有力視されたことで通貨ペソや株価が一時的に急落した。まだ通貨危機には程遠いが、もし危機が差し迫れば、自国通貨を外貨に換える資本逃避への規制は当然としても、暗号資産の取引も規制される可能性が高い。通貨防衛のためには、資本規制だけでは不十分で、暗号資産に通じるルートを遮断しなければ意味がないのだ。このような例が、コロナ禍終息に伴い新興国で増加する可能性が相応に高い。

投資対象として機関投資家にも認知され始めた暗号資産だが、コロナ禍終息を見据えて対応するのが得策だろう。

以上(脱稿5月27日)

運用戦略部 チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一

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