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2021.09.02 エコノミスト・ストラテジスト・レポート ~鳥瞰の眼・虫瞰の眼~

「共同富裕」は中国の経済発展路線の大転換となるのか

中国共産党の経済政策に対する懸念から中国のITなど特定セクターの株価が大きく下落している。元々共産党の結党の精神には資本主義の腐敗を指弾する性質がある。2019年には未成年者の心身の健康を大義名分に夜間のオンラインゲームを禁止して関連企業の株価急落を引き起こした。最近の共産党はこの流れを一段と強化している。8月に国営メディアはオンラインゲームを「精神のアヘン」と呼んで強く批判、株価が急落した。日本の早稲田アカデミーに相当するような教育関連の株式会社は、営利企業ではない組織形態への転換を余儀なくされ株価が急落した。独禁法の運用は強化され、ITプラットフォーマーであるアリババなどネット企業に対し、共産党の指導に沿うよう組織変更や幹部の入れ替えを強要した。6月に米国に上場した配車アプリの滴滴は、上場直後に顧客データ管理に問題があるとして、事実上の新規営業停止の制裁を課された。

共産党の意図は3つあると考えられる。第一は庶民の味方の演出だ。貧富の格差から前向きに生きる希望を失う「寝そべり族」の若者が増え、教育費用の高さから少子化に歯止めがかからない事への対応だ。第二はIT企業がデータを握り権力を持つことへの警戒感だ。プラットフォーマーとなってスマホの通信履歴や行動履歴を握るIT企業は、もはや秘密警察を超える存在だ。共産党が恐れを抱いても不思議はない。第三は米国との対立だ。中国で上場せず米国だけに上場する中国企業の時価総額は今年3月時点で150兆円はあるとみられ米国人に高い人気の投資先だった。しかし、米中の双方が経済関係を強化から冷却化へと舵を切った。

そして、8月に中央財政経済委員会の会議で習近平は「共同富裕」の着実な促進を強調して「富の再分配」など新たな政策を打ち出した。一言でいうとトリクルダウン政策だ。一連の政策により鄧小平時代に始まった社会主義から資本主義への事実上の転換だった「先富論」は方向転換となる可能性がある。「共同富裕」という言葉自体は2012年頃には使われている。しかし、今年に入り税制や寄付など具体的手段が言及され始めた。この意味は、共産党の意図として、第一の庶民の味方の演出のウエイトが高まっている可能性が高い。ただ、この政策転換は劇薬だ。上手く行けば米国や日本で実現できていない格差是正になる。しかし、度が過ぎれば社会主義精神の復活であり、改革開放路線を象徴する「先富論」の前の時代への退化だ。

今後の株価についてポイントは2つある。1つは今後の中国株価の方向性だ。アークETFのキャシーウッズが強気を維持する一方、「世紀の空売り」で有名なマイケルバーリはアークETFの空売りポジションのETFの販売を始めた。目下これは米国金融界で最もホットな話題になっている。この対立する見方は株価指数にも表れている。中国上場の上海総合指数は横這いである一方、米国上場中国企業のETFであるゴールデンドラゴンチャイナ指数は大きく下落して時価総額は最大で約80兆円消失した。この乖離について、短期的にはどちらが正しいかの正解は、2022年10月が想定される習近平国家主席が異例の3期目に入るまでのポーズであるかどうかで決まる。だが長期的には、「共同富裕」が良薬である適正な格差是正か、度が過ぎて社会主義の復活かにかかっていると見て良いだろう。もう1つは中国株との連動性だ。中国企業に取って代わると期待されて米国GAFA株のように上昇するか、余波を受けて日本株のように連動して下がるかである。米中両にらみに経済安全保障の観点での見極めが肝要だ。

以上

運用戦略部 チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一

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