スマホ用ページはこちら

2021.09.09 エコノミスト・ストラテジスト・レポート ~鳥瞰の眼・虫瞰の眼~

株価上昇の持続性は次期自民党政権の政策次第

菅総理が9月3日に辞意を表明したことで自民党内で政局が一気に動き出した。株式市場は、まだ次期政権のシナリオが描けないにもかかわらず好感して急騰した。最近は菅政権の支持率が低下する一方、自民党支持率はほぼ横ばいだった。株式市場が好感したのは、ここで総理が代われば誰が総理になっても政権支持率は上向き、11月が想定される衆議院選挙で自民党が負けて政治が不安定化するリスクが大きく低下したことを織り込んだからだと見られる。ただ、次期総理が誰であろうと衆議院選挙で自民党が健闘して株価は上がる、というのは都合の良すぎる見立てだ。当たり前の見方として、次期政権の運営が菅内閣より劣後すれば、株価は急騰する前の低い水準に逆戻りするだろう。その意味で重要なのは、次期政権が菅政権の支持率を押し下げた原因を解決できるかどうかである。

菅政権の支持率を押し下げたのは、(1)コロナ対応、(2)景気対策、(3)非常時の国家のリーダーとしてのコミュニケーション、だと考えられる。自民党の次期総裁は9月29日に決まる。衆議院選挙は11月中旬が有望視されている。発足して1か月半の間に、これらの問題に有効な対応策が打てるかどうかである。

(1)コロナ対応に関して、誰が総理や厚労大臣でも何も変わらないという見方はある。確かに感染状況は政治でコントロールできる問題ではない。しかし、医療体制は違う。中国では、1日でPCR検査数200万回を超える検査場を建設し、10日で感染者1000人を収容する野戦病院を建設して全土から医師と看護師を集めた。こうした非常時対応が出来ない理由を並べる往々にして高齢の役人を更迭して、出来る方策を探る若手を登用するかどうかは、政治の意志だ。次期総理がこのような政治的意思を示せるかどうかである。(2)について、コロナ対策の予算が約30兆円も余ったまま昨年度から繰り越されている。背景にあるのは、菅総理が公助より自助を重視する思想を持っていること、もしくは財政規律を重視する財務省の意向だと考えられる。しかし、国際比較すると日本はコロナ感染者数が少ない割には景気の落ち込みが大きい。要するに、景気対策が不十分なのだ。次期総理の課題は、緊縮気味の財政政策を転換できるかどうかである。最初のリトマス試験は雇用調整助成金だ。雇用維持のために給付金が急増して残高が枯渇しつつあるため、2022年4月以降に保険料引き上げが検討されている。これは実態として増税と同じであり、不況の最中に実施すべきではない。(3)について、オリパラで日本のメダルラッシュが起きれば菅政権の支持率が上がるという目論見は外れた。こうした広告代理店がイベントを企画して有権者の気分を盛り上げ選挙での得票に結び付ける手口は、天下泰平の平時には通用するかもしれないが、コロナ禍の今は非常時である。非常時に必要なのは「リスク・コミュニケーション」であり、世界には多くの国家元首の成功事例がある。素直に見習うべきだろう。安倍第二次政権時代に重用されたスピーチライターなどの内閣府参与は、そのための制度と言っても過言ではない。

元々菅政権は、健康不安で突然辞任した安倍政権の後を2020年9月に引き継いだが、ワンポイントリリーフともみられていた。そして、安倍政権時代にやり残した脱炭素、行政のデジタル化、ワクチン接種、福島の原発処理水、最低賃金引上げ、などの課題解決に道筋をつけた。しかし一方、やり残した課題も多い。経済安全保障や非常時の私権制限などの行政の在り方などだ。これらはワンポイントリリーフではなく国家観を土台に長期安定政権が取り組む課題だ。その意味で、次期政権がまた結果的にワンポイントリリーフなのか長期安定政権になるのかは重要だ。もしまたワンポイントリリーフになれば、2001-06年に長期安定政権だった小泉政権の後、安倍(第一次政権)、福田、麻生、と政権をたらい回しした挙句に民主党に政権交代した悪夢の再来となるリスクがある。当時の最大の問題は消えた年金だったが、今回はコロナ対応だ。そして、2022年7月頃には参議院選挙が控えている。自民党は参議院では既に過半数を割っており、場合によっては自公で過半数を割る可能性もないわけではない。2つの国政選挙まで残された時間は少ない。小手先の対応でごまかしは効かないと見ておくべきだろう。(脱稿9月6日)

以上

運用戦略部 チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一

〈本資料に関するご留意事項〉
■本資料は、りそなアセットマネジメント株式会社が投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。■本資料は市場全般の推奨や証券市場等の動向の上昇または下落を示唆するものではありません。■本資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、りそなアセットマネジメントが設定・運用する各ファンドにおける投資判断がこれらの見解に基づくものとは限りません。なお、掲載されている見解は本資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。また、事前の連絡なしに変更されることがあります。■投資信託は、値動きのある資産を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元本を割り込むことがあります。■投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。投資信託のお申込みにあたっては、販売会社よりお渡しします最新の「投資信託説明書(交付目論見書)」および一体としてお渡しする「目論見書補完書面」を必ずご確認のうえご自身でご判断ください。