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2021.12.20 エコノミスト・ストラテジスト・レポート ~鳥瞰の眼・虫瞰の眼~

2021年の株式相場総括、「強気相場は恐怖の壁を上る」

まだ2021年が終わったわけではないが、今年の株価の動向を総括しておきたい。今年の米国株価は、年末株高の示現は微妙な情勢ではあるが、史上最高値を更新した回数、下押しした値幅の小ささとそのごく短かった期間、など記録的な強さだった。にもかかわらず、市場のムードは総強気からは程遠く、相当数の弱気派がいた。現にマイナス材料も多く相場格言にある「強気相場は恐怖の壁を上る」を地で行く相場展開で、ベテランの投資家でも既視感はあまりないだろう。

こうなった最大の原因はAI(人工知能)による自動売買にあると推察される。AIは、たとえば「デルタ」、「オミクロン」、「強い感染力」、「医療崩壊」、「インフレ高進」、「タカ派」、「利上げ」などの言葉を世界中のネットから語彙検索し、検索数をリスクの顕在化と見なして株式売却の判断の根拠にしていた可能性が高い。11/29-12/3の世界的な株価の急落もこのメカニズムで発生した。しかし、人間なら、オミクロン株が無症状や軽症者が多く、コロナ禍の終わりの始まりという朗報である可能性もあることは、最初から分かったはずだ。翌週の株価の急騰は、12/8に米国の感染症の権威であるファウチ大統領首席医療顧問がそのような見通しを示したことで、確信度を高めた人間の判断が株式の買い発動につながった。2021年は株式の投資判断でAIが人間に負けた象徴的な年だったとも言えるだろう。論理を組み立てて将来を予測することが不得意なAIが売買で大きなウエイトを占めるようになった事実は、相場変動を説明するのに「織り込み済み」という言葉使いが激減したこととも軌を一にする。米国株式のVIXがまま急上昇するなど振れやすくなったのも、これが原因だと考えられる。

弱気派の最大の根拠はインフレだった。そして、米国の消費者物価が11月に6.8%と39年ぶりの高さにまで高騰するなど実際にインフレは示現した。しかし、期待インフレは上がらず安定したままで、10年国債に見る長期金利も1.5%前後で安定したままだった。米国で、インフレがごく一時的ではなかったものの、スパイラル的に上がらないことについては、二次効果や物価・賃金スパイラルという言葉で説明され、多くのエコノミストは高い確信を持っていた。

この辺りの事情はプロとアマを分けるメルクマ-クにもなったことだろう。ツイッターやユーチューブの登場で、投資においてもプロとアマの境目は見えなくなった。しかし、一時的なインフレと持続的なインフレを分ける要因は何か、コロナ禍はインフレにどう影響を与えたのか、足元のインフレと長期金利はどういう関係なのか、などはプロでないと分からない複雑な問題だったと考えられる。短絡的な思考がネット空間に溢れ、その回数をAIが検索して回数を数え、リスクの顕在化と見なす思考は、到底正しいとは言えない。ちなみに、相場格言には「飛びつく魚は釣られる」ともある。

ただ、残念なのは日本株だ。米国株の強さの背景には、果敢に変化に対応するチャレンジ精神がある。それはブームが続く起業数、生産性の高さなど統計数値にもはっきりと出ている。翻って日本について、日本人でもこの令和時代に昭和の亡霊が蘇るとは想像できなかったはずだ。岸田政権は、閣僚人事は昭和の派閥全盛時代へ、補正予算の政策決定は昭和の官僚丸投げ時代に先祖帰りしている。補正予算の10万円給付を巡るドタバタなど決められない政治も頭をもたげてきた。外国人投資家の岸田政権に対する失望は相当に深い。このコロナ禍を受けても変われない政府や企業は、もう永久に変われないと最終的な烙印を押される可能性すらあるだろう。(脱稿12月13日)

以上

運用戦略部 チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一

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