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経済の話、投資の話(第1回)

初めまして。ニホンノミライのファンドマネージャーを務めております井浦と申します。 ニホンノミライが誕生してから間もなく1年が経とうとしていますが、これからお伝えしようと思うことは私がニホンノミライを作るにあたってしたためた、いわば所信表明演説です。

1年経った今読み返してみても何ら変わることなく、陳腐化することなく、もっと言えば今から10年後に読んでみても基本的には手直しする必要がない、ニホンノミライの憲法のようなものです。最近のマーケット環境は、米中貿易摩擦の話や米国利下げを論点にした市場と政治サイドの駆け引きであったりと荒天模様ですが、そんな時だからこそ一度立ち止まって『投資の本質』についてゆっくり考える機会になりましたら幸いです。

今この文章を読んでいただいている方の中には金融の世界に精通されていて、投資経験も私より豊富で、投資のことなら酸いも甘いもよくわかっているよ、という方も大勢いらっしゃると思いますが、一方で、これまでの人生で一度も投資というものに縁がなかった方、それどころか金融、投資って何となく怖い、難しい、汚い、損する、騙されるというネガティブな印象から投資に目を背けてきた方、食わず嫌いだった方も少なからずいらっしゃると思います。私は、私達のファンドの素晴らしさ知っていただくために投資ベテランの方にもご納得いただけるものをお届けしたいと思うと同時に、今まで投資経験のなかった方にこそ読んでいただきたいとの思いから筆を執らせていただきました。

というのも、私自身も昔は金融食わず嫌いのタイプの人間だったので怖い気持ちがよくわかるからです。学生時代の私はといえばお金にはあまり興味がなくて、私が心躍るものと言えばスポーツや旅行や芸術や歴史といった人間臭いもの、つまり超文系、超アナログなタイプの人間でした。金融はお金稼ぎが好きな人、数学などが苦労もなくスラスラできるような頭の良い人がやるもので、自分のような人間には向いていないし、必要とすらされていないのだろうと感じていました。

それが20年経って株のファンドマネージャーとして学生時代の自分と180度逆の立場でこうして皆さんに文章を書いているのだから人生とは不思議なものです。

縁遠く感じられる経済も金融も投資も、元々は人間がより快適に、より安心して暮らしたいという当たり前の、実に原始的な欲求から生み出されたものです。であるならば、どんなに時代が進んで、世の中が複雑になろうとも皆さん一人一人の本質的な欲求・希望と無関係なはずがありません。必要以上に距離感を感じるのは学校や普段の生活で身近に触れる機会が少なかったり、皆さんの目線にあったコンテンツにまだ出会えていなかったからだと思います。金融というと「難しいもの」と思われるかもしれませんが、私も常々、物事をシンプルになるべく平易な形に置き換えて、+-×÷のみを駆使して理解するようにしていますが、その方法でもとりあえずこの世界で生きていけています。

例えば、経済というのは皆さん一人一人が朝起きて、食事をして、電車に乗って、学校や会社にいって、買い物をして、遊びに行って、夜になったら布団で眠る。そんな一日一日の積み重ねがやがて人生となり、そんな一人一人の人生の集まりこそが「経済」なのです。投資とは明日を今日よりも良くしたいという人々の想い、行動のことです。大昔の私達のご先祖様達が寒い冬を乗り切るために毛皮の服を作ろうと思い、シカを捕まえて毛皮を採って、縫うための糸を植物から作りだし、縫い針を動物の骨から作りました。そして皮をなめして、縫い合わせて、ようやく防寒服が完成します。ここまでに要した労力・時間はいわば投資です。時代が進めば物々交換、お金で売買、より効率的に服を作るために技能が細分化し、羊を飼う職人、針を作る職人、縫う職人と分かれ、そして大量生産するために牧場を作り、縫製工場を作りました。これらも全部投資です。そう考えてみると、今この瞬間、皆さんの目に飛び込んでくるものほぼ全て、椅子も机も車も家も靴もスマホも、いつか、どこかで、誰かが投資してくれたものに囲まれて私達は生きているのです。今日、私達が飢えずに生きていられるのも、寒さで凍えずに済んでいるのも、病気で死なずにいられるのも、誰かの投資のおかげなのです。そう考えると誰かがいつかどこかで行った「投資」に感謝の気持ちが湧いてきませんか?自分はご先祖様から山のような恵みをいただいて日々生きているのに対して、自分はこれっぽっちもまだ恩返しができていないなと思います。でも、負い目を感じることはありませんし、ましてや卑屈に感じる必要はありません。未来の世界がこんな風になったらいいな、とあなた自身が思うことに小さな一歩でもよいので「投資」をしてほしいのです。方法に決まりはありません。大きな志をもって起業する、でももちろん良いですし、ボランティア活動をするでも良いですし、いやいやそんなお金も時間も余裕もないよ、という方でも必ず何かできることがあると思います。好きだなと思う会社の商品を買う、SNSで拡散する、ということも広義の意味での投資になると私は思います。あなたがいいなと思う商品が売れれば、その会社の売り上げが増えて儲かって、工場を増設してもっと沢山の人が買えるようになれば、あなたと同じような「いいな」という感情が世の中にもっと増えていきます。それだけだって世の中にいい影響を与えていることになります。儲かったその会社は新たな資金を得て、もっと素晴らしい商品開発をしてくれるかもしれません。

こうした色々ある投資という方法の中に(株の)投資信託を買うというものがあります。この方法のいい所はわずかなポーションではありますが皆さんは様々な企業のオーナーになるということです。あなたの好きな企業が投信の投資先に入っていたとします。その投資信託をあなたが買っていたら、誰が何と言おうとあなたはオーナーの一人です。その企業が素晴らしい商品を開発し、世の中に広まり、そして世界にハッピーが増えたなら、あなたの投資したお金が世の中を一歩変えたということです。

その会社は売上が伸びて、利益が増えて、株価が上昇し、配当も増えるかもしれません。そうすると投資信託のリターンは増加します。つまり、あなたの投資資金が増えます。それはあなたが勇気を持って、リスクをとって世の中を良くしてくれると期待した会社にファンドを通じて出資をした見返りです。胸を張ってリターンを受け取りましょう。お金に色はないといいますが、敢えて言えばそれは「きれいなピカピカのお金」です。勲章です。日本ではどちらかというとお金儲けはあまり品のいいものではない、好ましいものではないという風潮も時々見受けられます。しかし、アメリカは真逆です。アメコミヒーローはバットマンだって、アイアンマンだって、サンダーバードだってお金持ちが正義のために私財をなげうって悪を挫き、弱きを助けるストーリーばかりです。私はなにも金持ちがいいといっているわけではありません。お金を稼いで世の中を良くするというWIN-WINの方法があるということを理解してほしいのです。その方がもっと大きくて持続的なインパクトを出せるのではないかと思うのです。その投資信託のリターンを今度は一消費者として素晴らしい企業の商品を買ってあげてください。そうすると、またその会社の業績が伸びて、株価が上がって投資信託のリターンが増えてまた投資家の皆さんの資金が成長します。そうしてどんどんどんどん順回転して、グッドサイクルが大きくなっていくと世の中はもっともっといい方向へ向かっていくはずです。最初は重くて動かない押し車でも少しずつ少しずつ回転していくと、どんどん加速していって、途中からはあまり力を入れなくても進んでいって最後は想像もしていなかったような遠くまでいくことができます。投資においても同じことができると私は思います。最初は実感できないような小さな一歩かもしれませんが、一人が十人になり千人になり、一万人になり、やがて大きなムーブメントになっていく、そして世の中を変えていく、そんなことも決して夢物語ではないと思います。

りそなアセットマネジメント株式会社
株式運用部
チーフ・ファンドマネージャー
井浦 広樹(いうら ひろき)