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投資の現場(第4回)

私達(ニホンノミライ)にとって一番の付加価値の源泉である「社会構造の変化」をどのように見つけてくるのかというと、自らも一需要者、一消費者、一経済主体として日々見るもの、聞くもの、感じるものを大切にします。一見ありふれた情報や出来事の中にこそ本質的なものが含まれていて、次の時代の変化の兆しがあると考えます。バラバラの事象の共通項を見つけ出し、その背景には何があるのかとイマジネートしていきます。常にアンテナを高く張り、24H365日、テレビを見ている時も、本を読んでいる時も、休日旅行に行くときも、友達と飲みに行くときも、家族サービスをするときもすべてが貴重な経験であり、気づきのチャンスとなります。そう言うとワーカホリックみたいですけど、逆に言えばいつでも遊び心をもって仕事をしているのでとても充実したやりがいのある仕事です。そうして各人が集めてきた情報やアイディアをチーム3名が週3回×2時間(時にはランチの時やお酒を飲んでいる時も)たっぷりの時間を使って、膝を突き合わせながら、あーでもない、こーでもないと社会構造の変化についてディスカッションしています。それぞれが年齢も、家族構成も、趣味、嗜好も違うので情報の間口も広いですし、切り口の視点も違うのでとても面白いです。例えば、私の師でもある清水ファンドマネージャーはテレビが好きで毎クール、全部のドラマを録画してチェックしています(最近ではサイバーエージェントのAbemaTVもカバーしています)。その中から推奨番組をいつも教えてくれます。私はそれをどんな情報よりも信頼して見ています。仕事というよりは単純に清水さんの推奨番組はいつも面白いからです。その中から、「最近、婚活のドラマが多いな」とか「この俳優が最近流行っているのはこうした社会背景だな」とか実に深い洞察で世の中の動きを切り取ってくれます。私よりも20も年齢が離れているのに、旺盛な好奇心と瑞々しい感性にはいつも感嘆させられます。

こうして出てきた素材を社会構造というストーリーに当てはめて、その背景にはどのような需要が存在するのか、するとその需要に対して企業はどのようなサービスを供給して需要を満たそうとするのか、ではそのサービスを提供するためにどのような素材や産業がつながってくるのかとバリューチェーンを紐解きながら連想ゲームをしていきます。そうして出てきた仮説を検証するために、チームの3名がそれぞれ関連する企業に取材をして確かめに行くという流れになります。

例えば、今でこそインバウンドというワードは当たり前のワードになりましたし、数年前には流行語大賞にもなりましたが、私達は7年も前から注目してリサーチを進めていました。きっかけとしては、自分が銀座に買い物に行ったときに随分外国人が増えたなと感じたことや、ニュースでニセコのスキー場を見たら日本人よりも外国人客の方が多くなっていて、地価もすごい勢いで騰がっているらしいとか、出張に行ったら以前は1万円しなかったビジネスホテルが1万円以上していた、テレビ番組で日本文化好きの外国人を追っかける番組が増えたな、とか。これは構造的に外国人観光客が増えていく可能性が高くなるのではないかと仮説を立てます。背景としては新興国の成長による世界的な観光客数の増加とともに日本文化の成熟化による魅力度向上(いわゆるCOOL JAPAN)という二面性があるのではないかと。今はホテルの客室単価が高くなっているが、この先どんどん増えていけば供給不足に陥るのではないか?ホテルを新規で建設するのには時間がかかるし、そうすると空き家問題も深刻化していく中で民泊を解禁するという動きも必然なのではないか?と考えました。当時、社内会議の場で今年はインバウンド需要にフォーカスします、と発表したときになんで今どき外国人観光客なんだ?とか今まで増えてなかったのに急に増えるわけないじゃないか?と批判的にとらえられたのをよく覚えています。でも、それくらい前から準備して先回りしてリサーチをしていたので、当然市場が気づく前から投資することができましたし、場合によっては投資先の企業すらまだ本格的に需要を取り込みに動いていない状況からアプローチしているからこそ高いリターンが獲得できるのだと思います。

現在、私たちが想定している社会構造の変化は20近くあり、そこから紐つく有望市場は実に200余りに上ります。それを一覧にした社会構造変化の一覧表があるのですが、それがなんと当中小型チームが発足以来20年にもわたって連綿と受け続けられてきた門外不出のヴィンテージものなのです。これだけの歴史があり、かつ一貫して行われてきたものは国内を見渡してもあまりなく、これこそが当チーム、当ファンドの付加価値の源泉であり、うまみ成分の結晶です。

様々なストーリーの中からその確信度やタイミングや分散効果を吟味して厳選して銘柄をピックアップしていくので重層的でかつリスク分散が効いていて、変化に強い魅力的なポートフォリオの実現が可能となります。こうした一つ一つのテーマはそれだけで一つのテーマファンド(ロボットAIファンド、新興国テーマファンド、ニューテクノロジーファンド等)が作れるようなストーリーです。従って、当ファンドを一本、長期的にお付き合いいただければ、それだけでその時々の旬のテーマファンド(実際には旬になる前に仕込んで旬を迎えた時にはある程度売却し、次の複数のテーマへと移行しているのですが)をお買い付けいただかなくとも実質的には同等以上の効果をご提供できるようにプロのファンドマネージャーがタイミングとウェイトと銘柄選別を責任もって行わせていただいております。

りそなアセットマネジメント株式会社
株式運用部
チーフ・ファンドマネージャー
井浦 広樹(いうら ひろき)