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想定内の値動きに慌てない!投資におけるリスクの話

りそなアセットマネジメント株式会社
未来資産形成ラボ プロダクト・マネージャー
谷口 真優

当コラムでは、実際に資産運用をする際に、知っているとちょっと役に立つような、投資に関する用語や資産運用の基礎知識についてお伝えしていきます。

第2回の今回は、投資における「リスク」についてです。
前回、リターンだけでなく、リスクも考慮したパフォーマンス指標であるシャープレシオについてお話ししましたが、今回は「リスク」にフォーカスすることで、「相場の急な値動きにも必要以上に慌てる必要はない」ということをお伝えしていきたいと思います。

投資におけるリスクとは?

そもそも「リスク」とは何を指しているのでしょうか。
普段の生活で私たちが使うリスクという言葉には「危険」「悪いことが起こる可能性」などマイナスなイメージが含まれていることが多いかと思います。

東証株価指数(TOPIX、配当見込み)の値動き

しかし、投資の世界でのリスクとは必ずしもそのような意味ではなく「将来の不確実性」のことを指します。誰もが、自分の投資している商品や資産が1年後にいくらになっているかは予測できないですよね。

「それなら、結局投資の結果は運まかせなのか?」と思う方もいるかもしれませんが、値動きの見当が全くつかないわけではありません。1年後にピンポイントで値段が上がっているか下がっているかは分からなくても、投資する商品や資産によって、将来の値動きがどのぐらいの範囲に収まるのかは、ある程度予測することができるのです。

運用の世界では、こうした予測をするための値として、値動きのばらつきを数値で表したものをリスクと呼んでいます。そして、この数値としては標準偏差が最もよく用いられています。

また、先ほど例えとして1年後の値動きの話を出しましたが、これはリスク(標準偏差)やリターンというのは年率換算されていることが一般的であるためです。年率換算では、ある時点で購入した投資商品や資産の1年後のリターンとリスク(値動きのばらつき)を示している、ということも頭に入れておくと良いでしょう。

リスクの数値化

さて、リスク(標準偏差)を使うとその投資商品や資産の値動きがどのくらいの範囲で収まるかということをあらかじめ想定しておくことができます。

図を使いながら見ていきましょう。ここでは仮に、ある資産のリスクが約8%であり、期待リターンが約4%であるとします。
期待リターンとは、その資産を保有したときに、長期的に期待されるリターン(1年あたりの平均)の事で、いわばその資産の実力を表しているものです。

もちろん期待リターンは平均的な実力なので、いつもこの資産が4%のリターンを出せるわけではありません。8%獲得できるときもあれば、-6%まで下落した、というときもあるでしょう。

正規分布図

上図のグラフでは、その資産がどのくらいの確率でどのくらいのリターンが期待できるかということを表現しています。この釣り鐘型のグラフは正規分布図と呼び、左右対称のグラフになります。そして株式や投資信託などのリターンの分布はこのグラフの形状に近くなるということが言われています。
これを覚えておくと、保有している資産や投資信託の下落幅の実感を掴むのに非常に便利です。

正規分布図についてもう少し詳しく説明したいと思います。
①の矢印で示した範囲が「1標準偏差」の範囲であり、統計上この範囲に収まる確率は約68%となっています。この商品の場合は、リスク(標準偏差)が8%のため、期待リターン4%を中心として、±8%をした-4%から+12%の範囲が、1標準偏差の範囲となります。

②の矢印で示した範囲は「2標準偏差」と呼ばれ、リスク8%の数字をそれぞれ2倍した数字、つまり中心の値(期待リターン)から±16%の範囲を示します。
この正規分布図では、それぞれのリターンが発生する確率を示すことができると説明しましたが、①の矢印の範囲内で値動きが収まる確率は約68%、②の矢印の範囲で値動きが収まる確率は約95%であるといわれています。

つまり、この確率の数字を覚えておけば、期待リターン4%(年率)、リスク8%(年率)の資産は、1年間の値動きの範囲が-4%~12%の値動きに収まる確率が約68%、-12%~20%の値動きに収まる確率は95%であるということがいえるのです!
ですから、例えばこの資産を保有している間に、何かが原因で価格が急落しても-12%以内の下落に収まっていれば、慌てる必要はなく、想定内の下落ということになります。

値動きの大きい商品での具体例

今度は、値動きが大きいとされるテーマ型の投資信託や、外国株式に投資する投資信託で同じように下落幅を確認してみます。

左は米国成長株に投資をする投資信託、右は医療系の銘柄に投資するテーマ型の投資信託で、それぞれ投資信託A、投資信託Bとします。

実際の基準価額を用いて計算すると、投資信託Aの期待リターンは約8%、リスク(標準偏差)は約22%です。また投資信託Bは期待リターンが約6.5%、リスク(標準偏差)は約21%になります。(2006年5月から2020年10月の分配金再投資基準価額(月次)で計算)

先ほどと同じように正規分布図で見てみると下図のようになります。

投資信託のリスク・リターン(正規分布図)

考え方も同様で、1年間保有を継続した場合、投資信託Aでは-36%~52%の範囲で値動きが収まる確率が約95%、投資信託Bでは-35.5%~48.5%の範囲で値動きが収まる確率が約95%であるということになります。
また、それぞれのコロナショック局面での最大下落率を見てみるとどちらも、この値動きの範囲に収まっているということに注目です。

もし相場の急落時に何も知らずに、自分の持っている投資信託が-30%も下落してしまったら、動揺してすぐに解約したくなってしまうかもしれませんが、あらかじめこの程度まで下がる可能性があるのだと把握しておけば、より冷静な判断がしやすくなるのではないでしょうか。

もしくは、購入前に、あらかじめ実感をもって「こんなに下落する可能性があるなら怖い」と感じた場合は、よりリスクの低い商品を検討するという選択をとることもできます。

あらかじめリスクを把握することが大事

このように、リスクとリターンの数字を見ただけでは、今一つピンとこなくても、今回紹介した正規分布図を思い浮かべることができれば大体何%まで下落する可能性があるか、ということを前もって把握することができますよね。
「株はリスクが高い」、などと漠然と認識するよりも、実際のリスクの値を見てどの位までの下落が想定内であるかについて実感を持って理解しておくことが、相場急落時の落ち着いた行動につながります。

投資をする以上リスクをとることは避けては通れません。ですが、せっかく投資を始めても相場下落時に必要以上に慌てて途中で解約してしまった結果、「目標とする金額まで資産を増やせなかった・・・」となってしまっては非常にもったいないです。
自分に合った形で、できるだけ冷静に資産形成を行うためにも、自分の運用している商品やこれから購入を検討している商品がどこまで下落することが想定されるか、ぜひリスク(標準偏差)を使って確かめてみてください!