スマホ用ページはこちら

運用商品はどうやって評価されている??
シャープレシオについて

りそなアセットマネジメント株式会社
未来資産形成ラボ プロダクト・マネージャー
谷口 真優

当コラムでは、実際に資産運用をする際に、知っているとちょっと役に立つような、投資に関する用語や資産運用の基礎知識についてお伝えしていきたいと思います。

第一回となる今回は、投資信託などの運用商品がどのように評価されているかについてお話ししていきます。

みなさんは投資信託を買おうとするとき、何を見て決めますか?
どんな資産に投資しているか、コストはどのくらいか、リターンはどのくらい期待できるか、運用資産残高は大きいか・・・
見るポイントは挙げたらきりがないほどあると思いますが、誰もが気にするのは「パフォーマンス」ではないでしょうか。投資を行う人は少なからず資産を増やそうと思っているはずなので、パフォーマンスなんてどうでもいい、と思って投資信託を買う人はおそらくあまりいないのではないかと思います。

そこで今回は、運用の世界で非常によく使われるパフォーマンス指標の一つである「シャープレシオ」というものについて説明していきたいと思います。

シャープレシオとは?

パフォーマンスを見る場合、一般的には「リターン」を見る方が多いと思います。しかし、リターンだけを見ていると、同程度のリターンのファンドが存在した場合に、どれを選べば良いか判断に迷ってしまいますよね。そんなときに使えるのが「シャープレシオ」という指標です。

シャープレシオの計算方法

シャープレシオとは、一言でいうと「その商品がどのくらい効率よく運用できているかを測る指標」です。

シャープレシオの計算方法

上のように、リターン(正確にはファンドのリターン-無リスク資産のリターン)をリスク(標準偏差)で割った値をさします。
これによってそのファンドが、とったリスクに対してどのくらいリターンを獲得できたかを見ることができます。数値が大きいほど、より効率よく運用ができていることを示し、パフォーマンスが高いといえます。

具体的なイメージを持つために簡単な例で見てみましょう。
同じ2%というリターンをあげているファンドが2つあったとします。下図のように、(1)はリスクが10%、(2)はリスクが4%だとすると、それぞれのシャープレシオは(1)が0.2、(2)が0.5となります。

シャープレシオの具体例

したがって、(2)の方が数値が大きいため、(1)よりも効率的に運用しているファンドであるといえます!
実際に感覚的にも「もし同じリターンが期待できるなら、リスクはより小さい方がいいな」と考える方がほとんどではないでしょうか。

シャープレシオの目安

それではシャープレシオはどのくらいの数値を目安とすればよいのでしょうか?
一般的にはシャープレシオが1.0以上であれば優良なファンド、2.0以上までいくと非常に優良なファンドであると考えられています。

シャープレシオを用いたパフォーマンス比較

では次に、実際の投資信託の中でリターンの水準が同じくらいのファンドをいくつか選び、ある一定期間のパフォーマンスを比較してみたいと思います。今回はバランス型の投資信託の中から、比較的安定的な値動きを目指しているファンドを4つピックアップしてみました。
これらの投資信託A~Dをまずはリターンの高い順に並べてみますとこのようになります。

バランス型投資信託 リターンランキング

では、実際にシャープレシオを計算して比較した場合はどうでしょうか。

リスク・リターン分布図

グラフで示すと上図のようになり、投資信託ごとに違いがあることがわかるかと思います。
ランキングもリターンの時と順番が入れ替わっています。

リターンランキングとシャープレシオランキングの比較表

リターンが一番高かった投資信託Aはシャープレシオランキングだと4位中3位に、逆にリターンランキングの順位は高くなかった投資信託Cがシャープレシオランキングでは1位となっていますね。これを見ていただくとわかるように、リターンを見ただけでは、どのファンドが効率的な運用を行っているかを判断することが難しい場合もあります。
シャープレシオを使うと、リスク1単位あたりのリターンを比べて、一番効率よく運用しているファンドを見ることができるため、リターン水準が似ているファンドでもパフォーマンスを比較することができるのです。

シャープレシオの注意点

このように、シャープレシオは運用の効率性が一目でわかる便利な指標ですが、いくつか注意しないといけないこともあります。

同期間での比較

まず、シャープレシオは計算する期間によって値が変動するため、異なる期間のシャープレシオを比較してもあまり意味がないということです。比較の際には同期間のシャープレシオを使う必要があります。

比較対象は同カテゴリー

また、シャープレシオを使う場合には先ほどの例に挙げたように同じカテゴリーで比較することが大切です。例えば外国株式と国内債券など、リスク水準がそもそも異なるアセットクラスのシャープレシオを比較した場合、いくら外国株式のシャープレシオの方が高かったとしても、「そもそも高いリスクは取りたくない!」と考えている人にとっては外国株式を選択するのは適切ではないでしょう。

シャープレシオだけでは自分に合った商品は選べない

逆に、シャープレシオが高いからという理由で商品を選んでも、自分の目指すリターン水準に満たない商品だった場合、「もっと高いリターンが期待できる別の商品を選択するべきだった」というようなことも起こり得ます。つまり、シャープレシオだけでは、運用の効率性はわかるものの、自分に合った商品を選ぶことは難しいのです。商品を比較する際には、シャープレシオだけではなく、自分の期待するリターンと、どの位のリスクがとれるかも合わせて商品を見ることが大切です。

ただ、そうはいっても、ファンドのパフォーマンスを比較する際には運用会社や評価機関でシャープレシオが多く使われていることも事実です。実際に投資信託を見ていると、同じカテゴリーとして分類されている商品群の中には類似商品が非常に多く、比較することが難しいと感じることも多いかと思います。そういう時には、リターンだけでなく、リスクも考慮したパフォーマンスを簡単に比較できる「シャープレシオ」は非常に便利な指標といえます。

今回は運用商品の評価の基準の一つである「シャープレシオ」について説明してきました。「シャープレシオ=どのくらいその商品が効率よく運用できているかを測る指標である」、ということをぜひ覚えていただけたらと思います!