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戸田浩司の『サクッと!3分間コラム』第3回
私の「カリスマ・マネージャー」論

なさんは、不確実性が高い世の中で投資を行う際、投資について超人的な能力を持ったスーパー投資家がいたら何も考えずに全部任せたい、と思ったことはないでしょうか。あるいは、投資についてスキルを磨いて将来自分もスーパー投資家になってみたいと思っている方もいらっしゃると思います。そういうスーパー投資家は、時に「カリスマ(ファンド)マネージャー」と呼ばれ世間の注目を浴びることがあります。

「カリスマ」…なんとなく、魅惑的な言葉ですね。ウィキペディアで調べると、「超自然的、非日常的な資質や能力。神の賜物。一部の人々が持つ、他の人々をひきつけ感銘を与える強力な個人の性質」とあります。

では、りそなアセットマネジメントに「カリスマ・マネージャー」はいるのか?あなた(戸田)はどうなのか?というお問い合わせを頂いたら、私は、お客様からそのように信頼されることを目指したいと思ってはいますが、自分自身をカリスマだと思ったことはありませんし、カリスマ扱いもされたくないと考えています。また、弊社内をみても、尊敬はされている人はいてもカリスマ扱いをされている人はいません。

カリスマはいない、の自己否定に驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんし、弊社の運用に期待していただいているお客様も不安を持たれるかもしれません。でも、少しお待ちください、これから私が考える「カリスマ論」をお話しします。

「カリスマ」を「非日常的な資質や能力をもつ神の賜物」だと定義すると、「カリスマ・マネージャー」に期待されることは、「相場の先を的確にとらえ、間違いを犯さず常に圧倒的なパフォーマンスを上げ、周囲やお客様から全幅の信頼を獲得する人」だと思います。「カリスマ」の投資判断は常に正しいと期待され、周囲の人も「あの人の言うことなら絶対に間違いがない、自分たちの意見よりあの人の言うことの方が正しいはずだ」と盲目的に信じてしまいます。

信仰や芸術の世界ですと、何を正しいとするかは各々の価値観によるものなので、カリスマの行動や考えに魅力を感じて、強く信じるということがあって良いと思っています。その場合、カリスマの行動は、信じている人からすると全て正しいと感じ、そう考えても違和感はありません。

しかし、こと投資・運用の世界においては場合が違ってくると考えます。それは、金融市場には様々な市場参加者がいて、自分の価値観だけで値動きが決まるものではないからです。例え一人の人が強く信じたとしても、それが必ず実現されるとは限りません。また、常に不確実性が存在しているということも、大きく異なる点であります。当初の想定から世の中の状況が変わってしまい、それによる影響を大きく受けることも往々にしてあります。つまり運用においては、「常に絶対的に正しい判断をすることができる」ということはあり得ないので、個人の力量を盲目的に信じてしまうことはとても危険であると言えます。

例えば、ある株式投資で、当初の期待通りに株価が上がらず逆に大きく下落した場合、本来ならなぜ期待通りにならないのか?判断に見落としや新たな事実が発生していないのか?などの検証をしたり、周囲から注意喚起が出たりするはずです。しかし、その投資が「カリスマ・マネージャー」によるものである場合、株価が下がったのは投資判断が間違ったのでなく市場が誤った反応をしている、と判断して検証を怠ったり、周囲も「あなたは間違えているから投資判断を修正してください」とは言えず、結果ズルズル損を膨らませることが起こりがちです。これは、投資を行う際、最も重要な投資判断のチェック機能がマヒした状態であり非常に危険です。

このような状態になることを避けるためには、運用者はカリスマを自認して自分の能力を過信しないようにすることと、周囲の人から運用者に意見を言える環境をつくること、が大事になります。りそなアセットマネジメントではリスク管理部門が日々の投資のモニタリングを行うだけでなく、運用者は謙虚であること、相互にリスペクト(尊重)すること、を重視しています。職階の上下に関わらず意見を素直に言い合える自由で風通しの良い環境をつくり、常にチームプレイで特定の個人の力量のみに依存しないことをモットーにしています。

私は、チームプレイで運用を行うことで、特定の個人の判断に依存しすぎてチェック機能が果たせなくなるリスクを回避するだけではなく、自分と異なる意見も尊重することで多面的な角度から「PDCAサイクル(計画、実行、チェック、修正)」を回すことができる、と考えています。そしてそれこそが、お客様の信頼をいただけるような、長期にわたる安定的な運用成績を上げることに繋がると確信しています。つまり、私たちが目指すべきなのは個人の「カリスマ・マネージャー」育成ではなく、中長期的に持続可能な運用チームを構成しているりそなアセットマネジメントに対するお客様からの信頼獲得だと考えています。

りそなアセットマネジメント株式会社
株式運用部
ファンドマネージャー戸田 浩司

〈当資料に関するご留意事項〉

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