1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
最近、いろいろなものが怖ろしい勢いで値上がりして困ってます。インフレという言葉を耳にしますが、インフレって何ですか?
インフレは日常生活における総合的な物価の上昇を表すんだ。逆にデフレは下落を表す。最近は確かに物価が上がるインフレが起きているね。日本銀行は、物価の上昇は2%程度が望ましいとして政府と協定を結び、目標として明示しているんだ。
インフレが起こって皆さんは困ってないのですか?
物価に目標があるのは、所得も同じように上がることを暗黙の前提にしているんだ。
所得が上がるってことは、みんなのお給料が上がるのですか?
今年の春闘、春に高い賃上げを求めて労使が闘う姿はほとんど見られなかった。会社側が賃上げをあっさり認めたんだ。とはいえ決して高いわけではない。春闘で決まるのは主に大企業の賃金で、日本の労働者全体では低空飛行が続く可能性が高いんだ。賃金の伸びが物価に追いつかないと困るよね。
この先、今までどおりにたい焼きが買えるか心配になってきました。
物価が上がり始めています。昨年度は、4月から本格化した携帯電話の値下げの影響が大きく、消費者上昇率はゼロ近傍となりそうです。ただ、昨年度の前半はまだデフレで物価は下がっていました。しかし、後半に入って上昇に弾みがつきました。そして、今年に入り4月以降は2%近傍まで上昇すると見込まれています。一方、所得は1%程度の増加が見込まれています。この結果、所得の伸びが物価に追いつかない実質的な賃下げになることが懸念されています。政府が想定した姿のイメージは、賃上げ3%、インフレ率が2%、実質的な賃上げは1%でした。従って、想定とは大きく異なる状況になりそうな情勢です。あえて例えるなら、実質的な賃上げを伴わない悪いインフレです。ただ、これは日本だけではありません。欧米では物価はもっと大きく上がっており、世界共通なのです。
世界的に悪いインフレが発生した原因は大きく分けて三つあります。第1は脱炭素で化石燃料や鉱物資源への投資が停滞し、採掘コストが上がって価格を押し上げたことです。第2はコロナで、感染リスクの高い職場は著しい労働者不足に陥り、かなり無理な賃上げをして労働者を確保する一方、その分を販売価格に上乗せしています。第3はロシアウクライナ戦争で、両国の輸出シェアの高い小麦、石油、天然ガス、アルミニウムなどが大きく値上がりしています。言ってみれば、想定外の外部要因で、悪いインフレが世界中で発生しているのです。
政府は悪いインフレの対応策の検討に入りました。日銀が目指す良いインフレの実現は、もう少し先になりそうですね。
(埼玉新聞 2022年5月16日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
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