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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第4回 円安はいいことなの?

最近、円安ってよく聞きますが、円安って一体何ですか?

論より証拠。海外旅行を想像するとピンと来るよ。昔は1ドルが約100円で、アメリカに海外旅行に行くと、ドル表示の値段を100倍すると円換算になった。ところが最近は125倍しないといけないんだ。

100円だったのが125円ですか、25%の値上がりは高いですね。

逆に米国人が日本に旅行に来れば、かつては100円のものに1ドル払っていたのが、80セントで済むんだ。

円安で日本人は損をするけれど、米国人は得をするんですね。

対ドルの円相場は昨年初めは約105円でした。それが昨年末には約115円、そして今年に入って円安に拍車がかかり最近は125~130円です。この急激な円安が波紋を広げています。円安で得をしてメリットを得る、あるいはデメリットを受けて損をする、が真っ二つに分かれるのです。

円安でメリットを得るのは海外資産への投資家と輸出業者です。海外にドル建て資産を持っていると、価値が変わらなくても円換算すると増加します。輸出業者も同じです。貿易決済は大半がドル建てです。モノを輸出して対価をドルで受け取り、円に両替すると受け取る円が増えるのです。一方、円安で損をするのは輸入業者です。モノを受け取り対価を支払うためには円をドルに両替しなければなりません。円安になると、そのための円が増えてしまうのです。
円安メリットは自動車産業など特定のセクターや人に集中します。輸出企業は総じて優良企業が多く、海外資産に投資するには富裕層が多いのが特徴です。一方、円安のデメリットは、日本はエネルギーと食糧の輸入国であるため広く国民に分散します。特に、電気代、ガス代、ガソリン代、穀物価格、食肉価格などの値上がりは庶民に重くのしかかります。

これまで円安は、日本全体にとってはデメリットよりメリットの方が大きいと考えられていました。であるが故に政府は、これまでも円高に対しては対策を実施しても、円安は放置していました。しかし、7月の参議院選挙を控え、インフレが国民生活を苦しめ、円安がその一因になっているのです。政府のインフレ対策は、円安によるデメリットを和らげる対策でもあるのです。

(埼玉新聞 2022年5月30日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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