1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
もうすぐ安倍元総理の国葬が行われます。アベノミクスによって経済がよくなったという話を耳にしますが、どうなのでしょうか。
安倍政権末期にコロナ禍があったけど、景気の拡大、雇用の増加、好調な企業収益、株価の上昇など成果を上げたのは事実だと思うね。
それでは、良い政策だったということですね。
うーん、そうとも言い切れないかな。日の当たる成果の陰で格差が広がったなど問題が生じていたのも事実。格差は広範囲の問題で、高所得層と低所得層、都市と地方、大企業と中小企業など広範囲にわたる。
どこに焦点を当てるかで評価が分かれるのですか?
そうなんだ。ただ総合すると、経済を理由とする自殺者の顕著な減少、デフレからの脱却、過度な円高の是正など、一定の成果を上げたのは事実だと思うね。
第2次安倍政権は2012年12月の総選挙で自民党が圧勝し民主党から政権交代して発足しました。アベノミクスは、総理の名前と経済学を意味するエコノミクスをくっつけた造語です。
アベノミクスは、目的を低成長から脱する2%の経済成長率とデフレから脱する2%の物価上昇率に据えました。その手段として、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、を打ち出しました。これらは「三本の矢」として有名になりました。
アベノミクスは民主党時代の経済政策からは大転換でした。というのも、それまでの日本経済は円高とデフレで苦しんでいました。当時の対ドルの円相場は約80円でした。円高のおかげで海外から安い輸入品が流入したため、日本の国内企業は値下げで対抗せざるを得ません。多くの場合、値下げは賃下げを伴いました。賃金が下がれば消費は控えられます。こうして悪循環に入っていったのです。図式化すると、円高→値下げ→賃下げ→消費減少→もっと値下げ→もっと賃下げ、と続いたのです。この図式は米国で「円高シンドローム」と呼ばれました。そして、なぜ日本の当局者はこの悪循環にくさびを打ち込まないのか、不思議に思われていました。
アベノミクスの最大の功績は、円高を円安に転換して、この悪循環にくさびを打ち込んだことだと思います。円安になることに米国サイドの理解が得られた背景には、日米関係の改善もあったと見られています。
ただし、最近の円相場は、円高の是正を超えて過度な円安の領域にまで入っています。これにより、エネルギーや穀物などの輸入物価がインフレをもたらすなど問題になっています。問題解決に向け「キシダノミクス」が待たれる状況です。
(埼玉新聞 2022年8月29日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
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