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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第11回 コロナ感染と景気

最近コロナ感染者数が増えているって聞くので心配です。

経済の専門家としては、まん延防止措置や緊急事態宣言が発令されて不況に逆戻りしないかも心配だよ。

夏休みに旅行や帰省で人が移動したので、今後はもっと感染者が増えるって聞いたのですが…。

そうだね。ただ、欧米ではワクチンや治療薬の効果もあり、感染者数だけに着目しなくなっているんだよ。実はもう感染者数の公表を取りやめた国も多いんだ。

日本政府も同じような動きになってきているようですね。

海外では感染者数が増加しても社会活動を止めずに正常に行っている国も多くなってきているんだ。一言でいうと季節性のインフルエンザと同じ扱いに向かっている。

うまくいくのでしょうか?

内閣府が発表する統計に景気ウォッチャー調査があります。街角景気とも呼ばれ、経済の専門家ではない百貨店や飲食店の従業員に、景気の現状と先行きの方向性を尋ねて集計するものです。経済の状況を正確に反映することでよく知られています。この統計の結果は、2020年以降、コロナの感染状況と見事に連動しています。まず、コロナ感染者数が増加し始めると先行きの景気の見通しが悪化し始めます。そして、しばらくすると本当に景気が悪くなるのです。直近の状況は、コロナ感染者数の増加を反映して、先行きの見通しが悪化し始めています。

しかし、今後は従来とは違うパターンになる可能性があります。従来のパターン通りなら、これからまん延防止措置が発令され巣ごもりに戻ることでしょう。そうすると消費が落ち込み景気は悪くなります。しかし、感染者数が増えても重篤化しない傾向もあることから、政府は社会活動の正常化を進める方向性を示しています。日本で社会活動が正常化したら経済的に何が起こるでしょうか。先に正常化した欧米の例を見れば類推は可能です。まず、巣ごもりの間に家で使うパソコン、テレビなどが売れなくなります。そして、外出して飲食や旅行、またそのための化粧品や靴が売れるようになるのです。欧米では急激に旅行者が増加して空港は大混乱になりました。そこで混乱を避けようと次はクルーズ旅行がブームになりました。

こうしたことから日本でも景気回復期待が高まりつつあります。特に企業はコロナで先送りした設備投資案件が累積しています。部材不足で停滞した自動車の挽回生産は世界全体で1千万台もあるとみられています。コロナ感染の増加にはまだ警戒感が必要です。しかし、明るい兆しも広がっているのです。

※掲載紙面の内容に一部修正を加えています。
(埼玉新聞 2022年9月13日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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