1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
最近、投資で損失を出した人が増えていると聞きましたが、本当ですか?
世界的に株式や国債など債券の相場が下がったからね。損失を出している投資家が多いのは事実だろうね。
投資はギャンブルと同じなんじゃないですか。
ギャンブルでは負けた人が勝った人に払う。しかも、経費を差し引かれた後の少ない金額になるんだ。
投資は違うのですか。
投資は経済発展を成果の原資とする。だから全く違うんだ。
経済発展が成果の原資なら、いつも利益が出るということですか?
投資は将来の予測に基づいて行う。でも、将来の予測が外れたら、損失が出ることが短期的にはあるんだよ。
日本は世界随一のギャンブル大国です。競馬、競輪、宝くじ、パチンコなどを合算した市場規模は国内総生産(GDP)比率で約4%です。これは日本に次ぐギャンブル大国である中国や米国が1~2%であることと比較すると突出しています。訪日外国人は、朝から営業し外からはカジノのように見えるパチンコ、駅前の宝くじ売り場の行列、などを見ると驚愕(きょうがく)するのです。
一方、投資は逆です。日本は世界でも有数の投資小国なのです。個人金融資産に占める株式や債券などリスク性資産と預金など安全資産の比率を比較する国際統計があります。これを見ると、日本は突出してリスク性資産の比率が低く、預金の比率が高いのです。
おカネに色はないので一面的な人物像を描くのは良くないかもしれません。しかし、この二つの事実から浮かぶ典型的な人物像は以下です。日本人はギャンブル好きで損失を出す一方、金融資産は投資損失を恐れて預金を選好する。この人物像は、海外とは正反対なのです。
この背景に投資とギャンブルに関する投資教育の違いがあるとみられています。投資の本質をひと言でいうと、リスクを伴う期待値です。投資の期待値は経済発展を源泉とするので基本的にはプラスです。しかし、ギャンブルは射幸心を満たすことはあっても経費がかかる分だけ期待値はマイナスです。日本では、期待値がマイナスのギャンブルには積極的で、プラスの投資は損失を恐れて回避する人が多いのです。一方、投資教育が進んだ先進諸国は逆なのです。
投資で想定外の事態が発生すると、リスクが顕在化して短期的には損失が出ることがあります。これがまさに今年起こったことです。しかし長期的には、経済発展が続く限りプラスの成果が期待できると考えられています。
(埼玉新聞 2022年10月10日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
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