1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
プロ野球シーズンが終了しましたね。
セ・パ共に投手も打者もタイトルを総取りする選手が何人もいる、大投手、大打者の時代だね。試合の展開も米国型の大味な展開より、昔の緻密な日本の野球に戻ったように思うね。
何か理由があるのですか。
円安がどうも深く関係しているんだ。
そうなんですか?
円安とプロ野球がどのように関係するのか教えてください。
プロ野球の外国人選手の活躍と円相場には深い関係があります。日本に来るプロ野球選手はほとんど米国から来ます。年棒の契約は基本的にドル建てです。ここで円相場が関係します。円安になると同じ選手でも円建ての年棒が上がります。逆に円高になると下がります。円高の時代には有望なメジャーリーガーが訪日しやすい一方、円安の時代は逆なのです。
戦後の円相場には三つの節目があります。最初は1973年の変動相場制への移行で、戦後長く固定相場だった1ドル=360円から308円の時代を経て、変動相場となり円高になりました。次は85年のプラザ合意で更に円高となりました。そして最後は2012年の第2次安倍政権の誕生です。日銀は政府と協定を結んで大胆な金融緩和を開始しました。結果的に1ドル=約90円だった当時の円相場は、足元の140円を超える円安となりました。
日本に来る外国人選手はこの三つの節目を境に傾向が変わりました。1ドル=360円の円安の時代には、外国人選手は少なく、投手も打者もタイトルは日本人がほぼ独占していました。しかし、円高になると有望な外国人選手が訪日するようになりました。阪神のバース選手、巨人のクロマティ選手、ヤクルトや巨人にいたラミレス選手、西武にいたカブレラ選手などです。しかし、近年は円安のせいか日本に来る有望なメジャーリーガーが少なくなりました。
この傾向はプロ野球だけに限りません。訪日を希望する外国人が減少する可能性があるのです。近年の政府は、人手不足に政策的に対応して外国人労働者の受け入れ拡大を推進しました。その結果、この10年で約100万人増加して約173万人となっています。しかし、円安により外国人労働者から見て日本はもはや高給な国ではなく、訪日の動機が失われつつあります。恒常的に人手不足な業界は、抜本的な対応が求められる可能性があります。
(埼玉新聞 2022年11月7日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
(略歴)
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