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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第18回 来年の経済予想

早いものでもう年末です。来年はどんな年になりそうですか。

経済的には日本はそこそこの悪くはない年になりそうだね。ただ、世界的には1/3ぐらいがマイナス成長の厳しい年になるとも見込まれている。

世界的に見たら、日本はそこまで悪くないんですね。

日本が先進国の中で最も高い成長が見込まれるのはバブル崩壊以降で始めてだよ。

なぜ、高い成長が見込まれるのですか?

物価が上がったとは言っても本格的な利上げをするほどではない。世界各国が急激な利上げを進める中、日本は本格的な利上げをしていない珍しい国なんだ。

そうなんですね。

この時期になると主要な金融機関や調査機関は来年度の経済予想を発表します。メディアも取りまとめて比較する企画を出します。経済成長率、インフレ率、株価、為替などの予想です。多くの専門家が一致する見方をコンセンサスと呼びます。日本の来年度のおおよそのコンセンサス予想は以下の通りです。経済成長率は0.9~1.4%前後のやや高めの成長が見込まれます。消費者物価上昇率はやや低下して1.7~2.2%前後となりそうです。日経平均株価は若干の上昇、円/ドルの為替相場は秋口以降の円高の継続が見込まれています。一部には大幅な円高を予想する専門家も少なからずいます。

予想ですから想定外の事態が発生すると外れます。今年の想定外はロシアによるウクライナへの侵攻でした。これによりインフレが加速しました。そして、米国など多くの国が利上げに追い込まれたことで、経済成長率は下がり、企業収益も悪化したことで株価も下がりました。また、米国金利の上昇で日米金利差が拡大して秋口までは大幅な円安になりました。

2023年の世界的な景気は、今年の利上げの累積的な悪影響が時差を置いて出るため悪化が見込まれます。例えば米国では住宅ローン金利が約3%も上がりました。もしローン残高が3千万円ある人がいたら、利息が年間90万円も増えるのです。その分は節約する必要が生じるため、消費を押し下げます。結果的に景気は悪化するのです。

本格的な利上げをしていない日本には、このような悪影響がほぼありません。従って、日本は相対的に高い成長が期待できるのです。とはいえ物価の上昇に賃金や年金など所得の伸びが追い付きそうにないのも事実です。日本の景気が上振れするかどうかは、これから始まる春闘が鍵を握っています。

(埼玉新聞 2022年12月26日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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