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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第22回 円高傾向の影響

最近、ちょっと円高気味になってきているみたいですね。

今回の円高局面の特徴は、原因がはっきりしていることとスピードが速いことかな。

円高になることで、みんなの生活にはどんな影響が出ますか。

物価を押し下げる要因にはなるけど、景気を押し下げることにもなる可能性が高い。

それでは、投資への影響はどうでしょうか。

外国株式や外国債券への投資残高は円高で目減りする。日本株にも企業収益面でマイナス要因かな。

円安で物価が上がったので、円高になれば良いことずくめかと思ったら、違うんですね。

対ドルでの円安のピークは昨年10月下旬で約152円でした。ちょうどピーク付けたその日に日銀は海外市場で円安を止めるために大規模な円買い・ドル売りの市場介入を実施しました。結果的に市場介入は大成功で円高へと局面が変化するきっかけとなりました。

局面変化の背景は二つあります。一つは、米国でインフレが鎮静化する兆しが強まったことで、どこまでいくか分からなかった米国の利上げの終着点が見え始めたことです。もう一つは昨年12月の日銀による実質的な利上げです。日米金利差の縮小は円高要因になるからです。

円高の最大のメリットは日本の物価高が抑制されることです。庶民生活を苦しめる物価高の原因は、2022年の前半に加速した海外でのエネルギー価格や穀物価格の上昇でした。さらに22年は円安になったので、輸入価格の上昇を通じて、ダブルパンチで日本の物価を押し上げました。しかし、今後は逆です。22年の後半には海外でエネルギーや穀物価格は下落に転じました。そして、円相場も円安から円高に転じました。結果的には、高騰した日本の物価上昇率は、今年後半には沈静化していくと見込まれます。

しかし、円高にはデメリットもあります。輸出企業は収益が悪化するため、日本の景気を押し下げることになります。日本には輸出など海外で事業を展開する上場企業が多いため、日本株にもマイナス要因となります。また、ドル建てが多い海外の株式や債券への投資は目減りします。若年層に人気がある米国株式はその典型例です。

今後どこまで円高が進むのか、最大のカギは日米の金利動向にあります。いずれにしても、当面は円高を警戒しておくのが得策な状況が続くと思います。21年の年末の円相場は約115円でした。当時の一般的な感覚は、こんなに円安になるとは誰も予想できなかった、というものでした。

(埼玉新聞 2023年2月27日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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