1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
最近、ドミノ倒しのように海外で銀行が破綻したというニュースを見たのですが…。
3月10日にシリコンバレー銀行が破綻したね。その前後にも暗号資産関係などいくつかの小規模な銀行が破綻や清算をした。
銀行ってそんなに簡単に破綻するのですか。
いや、それはない。見込み違いやアクシデントが重なった面がある。
銀行が破綻すると預金が返ってこなくなるリスクがあるって本当ですか。
それは本当だね。現にその懸念が破綻の引き金になった。
日本の銀行は大丈夫なのでしょうか。
破綻したシリコンバレー銀行は総資産が約28兆円と全米で16位の銀行でした。破綻の原因は二つあります。第一に債券投資で失敗しました。ここ2年間で債券投資を約4倍に増加させたものの、昨年以降の利上げで債券価格が大きく下落しました。これで生じた損失が株主資本を割り込み、実質的に破綻と判定される債務超過になったとみられます。第二は預金の流出です。ネットでは、この銀行は破綻して預金は返ってこなくなる、などの書き込みが急増して預金の大量解約が発生しました。破綻の直前の2日間で1420億ドルと預金の大部分の解約が発生しました。ネットの操作で簡単にできるため、目に見えない取り付け騒ぎのような形で発生したのです。
ネットの有象無象の書き込みで預金の大量解約が発生すれば、健全な銀行まで破綻します。こうした懸念もあり、米金融当局は預金の全額保護や銀行の資金繰り支援など緊急避難措置を矢継ぎ早に実施しました。
米国では預金保険の上限は25万ドルです。預金者にしてみれば、預金先の銀行が破綻すれば上限を超える分は返ってこなくなるリスクがあるのです。預金を安全な銀行に移し替える自己防衛に動いたのも無理はないと思います。また、シリコンバレー銀行は、金融当局の金融検査、監査法人の監査、格付け機関のレビューを全てすり抜けていました。事実として経営に問題があったにもかかわらず、健全な銀行のレッテルが貼られたまま突然死のように破綻したのです。これは大きな問題でした。今後について当局は、金融検査体制を改善して情報開示を徹底する方針を示しています。
日本については、金融当局は総じてみると日本の金融機関は十分な自己資本を有している、一言で言うと経営は安全というメッセージを発しています。この認識は現時点では正しいと思います。
(埼玉新聞 2023年4月10日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
(略歴)
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