スマホ用ページはこちら

やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第25回 銀行の連鎖破綻は続くのか

最近、ドミノ倒しのように海外で銀行が破綻したというニュースを見たのですが…。

3月10日にシリコンバレー銀行が破綻したね。その前後にも暗号資産関係などいくつかの小規模な銀行が破綻や清算をした。

銀行ってそんなに簡単に破綻するのですか。

いや、それはない。見込み違いやアクシデントが重なった面がある。

銀行が破綻すると預金が返ってこなくなるリスクがあるって本当ですか。

それは本当だね。現にその懸念が破綻の引き金になった。

日本の銀行は大丈夫なのでしょうか。

破綻したシリコンバレー銀行は総資産が約28兆円と全米で16位の銀行でした。破綻の原因は二つあります。第一に債券投資で失敗しました。ここ2年間で債券投資を約4倍に増加させたものの、昨年以降の利上げで債券価格が大きく下落しました。これで生じた損失が株主資本を割り込み、実質的に破綻と判定される債務超過になったとみられます。第二は預金の流出です。ネットでは、この銀行は破綻して預金は返ってこなくなる、などの書き込みが急増して預金の大量解約が発生しました。破綻の直前の2日間で1420億ドルと預金の大部分の解約が発生しました。ネットの操作で簡単にできるため、目に見えない取り付け騒ぎのような形で発生したのです。

ネットの有象無象の書き込みで預金の大量解約が発生すれば、健全な銀行まで破綻します。こうした懸念もあり、米金融当局は預金の全額保護や銀行の資金繰り支援など緊急避難措置を矢継ぎ早に実施しました。

米国では預金保険の上限は25万ドルです。預金者にしてみれば、預金先の銀行が破綻すれば上限を超える分は返ってこなくなるリスクがあるのです。預金を安全な銀行に移し替える自己防衛に動いたのも無理はないと思います。また、シリコンバレー銀行は、金融当局の金融検査、監査法人の監査、格付け機関のレビューを全てすり抜けていました。事実として経営に問題があったにもかかわらず、健全な銀行のレッテルが貼られたまま突然死のように破綻したのです。これは大きな問題でした。今後について当局は、金融検査体制を改善して情報開示を徹底する方針を示しています。

日本については、金融当局は総じてみると日本の金融機関は十分な自己資本を有している、一言で言うと経営は安全というメッセージを発しています。この認識は現時点では正しいと思います。

(埼玉新聞 2023年4月10日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

黒瀬レポートはこちら

(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

〈当資料に関するご留意事項〉

  • 当資料は、投資環境や投資に関する一般的事項についてお伝えすることを目的にりそなアセットマネジメント株式会社が作成した情報提供資料です。
  • 当資料は、投資勧誘に使用することを想定して作成したものではありません。
  • 当資料は、当社が信頼できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
  • 運用実績および市場環境の分析等の記載内容は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果および市場環境等を示唆・保証するものではありません。
  • りそなアセットマネジメント株式会社が設定・運用するファンドにおける投資判断がこれらの見解にもとづくものとは限りません。
  • 当資料に指数・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権、その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料の記載内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。