1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
今年のゴールデンウィークはどこも人であふれかえっていたようですね。
今年はコロナ禍が収束した上に日の並びも良かったからね。飛び石ではない連休にするために5月4日を祭日にした効果は大きかったね。
政府は何か意図をもって連休をつくったのですか。
その通り。とはいえ国民が望んだ面もあるね。
休みが多いとみんなうれしいですからね。
戦後から昭和の終わりにかけて日本経済は、輸出主導の驚異の経済成長を実現しました。この原動力となったのが日本人の猛烈な働き方でした。しかし、良いことばかりではありませんでした。輸出攻勢をかけられた国は貿易赤字となり企業が破綻する例も出ました。そして、日本は失業を輸出していると批判されたのです。
政府は批判をかわそうと貿易黒字の削減に力を入れました。その一つが労働時間の削減です。猛烈に働いてたくさんのモノを作り海外に輸出攻勢をかけることを制限しようとしたのです。労働時間の削減は、週休2日制の導入、休日の創設、などでした。近年では、政府が進めた働き方改革の一環で、残業時間の総量も制限されることになりました。これらの結果、日本人の労働時間は昔の猛烈とは程遠いものとなりました。
先進7カ国G7で比較すると、1985年時点の日本人一人当たりの平均年間労働時間は2093時間でした。2位の米国が1893時間でした。この差の200時間はほぼ1カ月の労働時間に相当するほど大きなものでした。2019年には日本人は1644時間、米国は1777時間と逆転します。日本人の労働時間は449時間、27%も減少したのです。中には短時間のパートのような勤務形態もあるとはいえ猛烈は過去のものなのです。
昨今の物価が上がる中、近年の日本では平均所得がほとんど伸びなかったことが改めて注目されました。その一因は労働時間の減少にもあるのです。休日の増加や残業時間の削減は良いことばかりではない面があるのです。
海外では休日を減らすユニークな試みがあります。デンマーク政府は、防衛費を増税でまかなわない代わりに、休日を一日減らす法律が来年から施行されます。労働時間が増加すれば所得も増加し、所得税などの税金も増加するという考え方です。増税ではありますが所得も増えるのです。日本では防衛費の増加分を増税を中心にまかなう方針が示されています。休日の削減か増税か、究極の選択ですね。
(埼玉新聞 2023年5月8日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
(略歴)
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