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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第28回 好調な株式市場

最近、日本の株価が上がっているようですがなんでですか。

景気の回復、企業業績の回復、長期金利の低下、外国人投資家の再評価、が大きいかな。

良い話がそんなにたくさんあるのですか。

ある。しかも構造的な要因が多いんだ。

少し前までは悪い話が多かった気がするのですが、突然変わったのですか。

突然というわけではないよ。前から分かってはいたけど改めて注目されているんだ。

日本の株価が好調です。昨年末の日経平均株価は2万6094円でした。年初こそ120円台の円高や景気悪化の懸念から2万5千円台に下げる場面もありました。しかし、その後は悪材料が減り、好材料が増加したことで株価は上昇傾向となりました。先週末には33年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新して3万円台を回復しました。

減った悪材料は以下です。まず、日銀総裁の交代を機に、長期金利は懸念された上昇ではなく低下に転じました。これにより円高が円安に転換しました。米国経済は大きな景気後退に入るという悲観的な予想もありましたが、今のところは杞憂(きゆう)でした。欧州も、最悪の場合は電力不足で工場が停止して配給制になると懸念されましたが、暖冬で杞憂に終わりました。

減った悪材料はオセロゲームのように好材料となりました。植田日銀新総裁の明快な説明から日本の長期金利は再び低下しました。金利の低下は経済活動を活発化する要因となります。円安は企業収益にはプラス要因になります。米欧の経済は、下方修正が止まって上方修正が入り、企業収益も持ち上げる要因になりました。

日本独自の元々の要因では、コロナ禍からの経済再開、インバウンド再開、埼玉県経済にも恩恵の大きな自動車の挽回生産、底堅い設備投資、などが追い風になると期待されていました。これらのプラス要因が、円高や米欧経済の懸念など外的なマイナス要因が剥落したことで、素直に株式市場で評価されるようになったのです。

この流れを敏感に察知して日本株を大量に買い始めたのが外国人投資家です。5月には米国人の著名な投資家ウォーレン・バフェットが来日し、日本の商社株を大量に買いました。背景には日本の地政学的な優位性があることも示唆しました。

市場は常に何があるか分かりません。特に米国景気後退の懸念は、今もくすぶり続けています。とはいえ日本経済は、好調なインバウンド、工場の国内回帰、地政学的な優位性などを背景に、構造的に良くなる目途が立ったと思います。

※掲載紙面の内容に一部修正を加えています。
(埼玉新聞 2023年5月22日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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