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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第29回 インバウンドは日本を救う

最近、街中でよく外国人観光客を見かけます。

コロナ禍が明けてインバウンドが解禁された効果が出ているね。

そもそもインバウンドって何ですか。

一言で言うと訪日外国人の呼び込みで、政府は経済再生の一環として推進している。

外国人観光客が日本でお金を使ってくれるってことですか。

その通り。日本の魅力は大きく、落とすお金の額も大きいんだ。

ワタシのようなキャラクターも外国人に魅力的に映るといいですね。

政府が推進するインバウンドは経済政策として大ヒットと評価できます。2010年には訪日外国人は約860万人、消費額は1.2兆円でした。これが12年に第2次安倍政権が発足してビザの規制緩和や円安になると急増しました。コロナ禍の前の19年には訪日外国人は約3200万人、消費額は5.0兆円となりました。これは日本の経済成長率を約0.9%高める効果があります。18世紀の英国に始まった産業革命が経済成長を高めた効果は約1%程度とされています。これと比較しても非常に大きいことが分かります。

インバウンドは20年のコロナ禍以降は大きく落ち込みました。しかし22年秋口以降は徐々に解禁され再び増加基調に戻りました。とはいえまだ序の口です。コロナ禍の間に国際航空の定期便が減便されたり、中国が日本への団体旅行を規制する措置を残していることなどから、まだ大きな制約が残っているのです。制約がなくなればもっと増加すると見込まれます。

23年に入って新しい傾向も生まれています。一人当たりの消費額が19年の約16万円から約21万円まで大きく増加しました。外国人から見ると日本は円安と長く続いたデフレの影響で物価が格安の国なのです。

3月には米国人の訪日客数は月間で過去最高となりました。欧米人から見ると日本は不思議の国です。世界に類を見ない日本オリジナルのものが温泉、畳、着物、ゆるキャラ、寿司やなべ料理、抹茶、古民家など沢山あるのです。また、かつては奇異な目で見られたことが、逆に魅力的に見られるようにもなっています。たとえば、花見、亀料理(スッポン)、岸和田市のだんじり祭りや岡山県の裸祭りなど古代のような風習が残っている、などです。

インバウンドは日本経済の救世主になる力があるのです。一方で京都など人気の観光地では観光公害も出始めており対策が必要になっています。

(埼玉新聞 2023年6月5日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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