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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第32回 インフレ税にご注意を

インフレが全然止まらず、たい焼きの値段がどんどん上がって困っています。

去年は円安や資源高がインフレの主因だった。今年は賃上げ分が販売価格に上乗せされる値上げも増えているね。

賃上げするともっとインフレになるのですか。

程度にもよるけど、それを政府・日銀は賃金と物価の好循環と呼んでいる。

本当にインフレを歓迎していいのかどうか疑問です。

確かにそういう面はある。インフレ税って聞いたことあるかな。

知らないです。もしかして、増税の話まであるのですか。

最近は食品などモノだけでなくサービスの価格上昇が目立ちます。ネイルサロン、整骨院、遊園地などサービス価格は、人件費が大きなウエートを占めます。こうした業種では、賃上げ分が値上げという形で販売価格に反映されやすいのです。

政府・日銀は賃金と物価の好循環として、2%の物価上昇と3%の賃上げを理想として推進しています。ただ簡略化すると最近の現実は、3%の物価上昇と3%を少し下回る賃上げです。理想にはまだ届きませんが、デフレ脱却など方向性は正しく、現行の金融緩和や賃上げ支援は継続される見込みです。

ここで問題になるのが通称インフレ税です。インフレ税という税金はありません。しかし、実態として税金支払いのように資産が目減りすることから、こう呼ばれています。具体的に説明しましょう。1年前には100万円で100万円分の買い物ができました。もし買い物をせずに、銀行に0.002%の金利で定期預金したらどうなるでしょうか。1年間で利息が20%の税引き後で16円付きます。一方、去年の物価は前年比で4.0%上昇しました。1年前に100万円だったものが、平均的には4万円値上がりして104万円になったのです。16円の利息と4万円の値上がりを比較すると、定期預金は実質的な購買力が目減りしています。この目減り分がインフレ税です。

インフレ税は、デフレの時代には全く逆に作用します。いわばデフレ利得のようなものが、バブル崩壊後の日本には長く存在したのです。しかし、時代はもはや変わりました。

インフレ税への対応は、日々の節約とは次元の異なる対応を要します。それは一言で言うとインフレに強い資産、インフレと共に価値の上がる資産を持つことです。多額の預金を持つ人にとっては、インフレ税対策のための工夫をする時代になったのです。

(埼玉新聞 2023年7月24日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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