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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第36回 円安と株高と阪神優勝

阪神が優勝して大阪が盛り上がっていますね。

株価も上がると期待が高まっているよ。

そういえば、阪神が優勝した年は株価が上がると前に黒瀬さんが言っていましたね。でも、優勝で一時的に株価が上がっても喜べません。

実は今年の阪神優勝には企業経営のヒントが大いにあるんだ。

野球と企業経営?どんな関係があるのですか。

以前もお話ししましたが、近年、阪神が優勝した1985年、2003年、05年は、全て経済が大きく変わる節目の年で、株価も大きく上がりました。1985年はプラザ合意で景気悪化と株価下落が懸念されましたが、実際にはバブルに向かう起点となりました。

2003年は不良債権の抜本処理によってバブルの敗戦処理が終わり、株価は長年の低迷から脱しました。05年は小泉郵政解散の年で構造改革期待から株価が大相場をつくる起点になりました。他にも08年は、優勝ペースだった阪神が急失速したのに合わせるかのように、同年10月に発生したリーマンショックに向かって景気も株価も急激に悪化しました。そして、今後に期待されるのは、積年の課題であるデフレからの脱却と「賃金と物価の好循環」の定着です。

今年の阪神は円安時代にうまく適応した戦い方をしました。日本のプロ野球界は、ドル建ての契約金額が円安で高騰したため、外国人の大砲のホームランバッターや剛速球のピッチャーが取れなくなりました。まだシーズン途中ですが、打者と投手の個人成績の上位に外国人はほとんどいません。これにより大味な試合が減り、日本人が得意とする緻密な野球が戻ってきました。それこそが今年の阪神の戦い方だと思います。まだシーズン途中ですがフォアボール、送りバント、盗塁の数はセ・リーグで1位か2位です。代わりにホームランは大きく減少しました。投手を見ても、球速は遅いものの、コーナーを突いてタイミングを外す緻密なピッチングをする多くの日本人投手が開花しました。

企業経営の課題は、常に新しい環境への適応です。円安以外の新しい環境としては、デジタル化、脱炭素、自動車がエンジン車から電気自動車(EV)へ、金利のない世界からある世界へ、経済安全保障への適応が急務です。円安という新しい環境に適応した阪神の戦い方は、ある意味で企業経営の手本だと思います。円安が日本のプロ野球の戦い方まで変えたとは、意外というより、必然ですね。

(埼玉新聞 2023年9月25日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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