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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第37回 絶好調な企業収益

最近、企業の業績が好調だと聞きました。

日本企業が史上最高益を出したという、うれしいニュースが出ているよ。

そんなにうれしいニュースなのに報道はあまりされていないような気がします。

ちょっと実感に合わないところがあるんだ。

言われてみれば、電気代、ガソリン代、仕入れ値の上昇で経営が苦しい企業が多いというニュースを良く見ます。

史上最高益とは言え、業種や企業規模で格差が大きいのが特徴で、どこに焦点を当てるかでかなり違う。

それだと手放しでは喜べないですね。

企業収益の実数は財務省が発表する法人企業統計調査で確認できます。2023年4-6月期の全規模全業種の経常利益は35.4兆円と過去最高でした。

他方、よくマスメディアでは正反対の事例が取り上げられます。インフレで仕入れ値が上がっても売値に転嫁できず経営が苦しい企業などです。他にも電気代、ガソリン代、人手不足で人件費も上がっています。企業経営の観点では、ありとあらゆるコストが上がっていると言っても過言ではないのです。

それでも事実として利益水準が過去最高ということは、コストの増加以上に売上が増えたということです。ただ、業種や企業規模で大きな格差が生じています。

好調なのは輸出企業です。円安のおかげで売上や海外に持つ資産の為替評価益が大きく伸びました。代表例は自動車会社や商社です。しかし、円安は輸入企業にとっては逆風です。円安で輸入品のコストが上がる一方、それを売値に転嫁するのは総じて難しいからです。代表例は食品や繊維です。

サービス業も好調です。今年はコロナ禍が明けて3年ぶりの旅行や宴会を多くの人が楽しみました。さらに外国人観光客も急増しています。この恩恵が、ホテル、飲食、陸運、旅行代理店など広くサービス業に及んでいます。一方、コロナ禍の巣ごもり期間によく売れたテレビやエアコンなど家電、家具、パソコン、スマホは、反動で売上が大きく落ち込んでいます。

企業規模の面でも大きな格差が生じています。総じて見ると、大企業は好調なものの、中小企業や零細企業はコストの増加で苦しんでいます。大企業に対し公正取引委員会や経済産業省は、下請けいじめや買い叩きをしないよう厳しく指導しています。

好調な企業収益を反映して日本の株価はバブル後の最高値圏にあります。往々にして金融市場は人間の実感より客観的な事実を正確に反映する傾向があります。

(埼玉新聞 2023年10月16日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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