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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第39回 旬の味覚と需給関係

秋の旬の味覚が安くなってきましたね。

サンマの値段が下がったのがうれしいよね。

ホタテや高級ぶどうのシャインマスカットも下がっています。

猛暑などの影響で他にも値段が下がった旬の味覚が結構あるよ。

インフレが続く中、うれしいです。

その背景を探ると生きた経済の勉強になる。

勉強して節約生活に役立てたいです。

価格の変動とは面白いもので、背景にはなるほど、という原理が働いています。サンマの値下がりは漁獲高が増加したことが原因です。シーズン当初は不漁で高値が付きました。しかし、9月中旬以降は供給量が増加しました。ホタテは最大の得意先だった中国が日本産ホタテを輸入禁止にしました。行き先を失ったホタテが日本国内で値段を下げて売り出されています。猛暑の影響ではシャインマスカットやレンコンは豊作となり値段が下がっています。

値段が下がった食材に共通するのは供給量が増加したことです。供給量が増加すると値段は下がります。売り手にしてみれば、値段を下げて買ってくれる人の数を増やさないと余ってしまいます。売れ残りとなれば廃棄処分とならざるを得ません。廃棄処分を防ぐために値下げして売り切ろうとする光景は、実は日常的に見られます。閉店間際のスーパーでは、生鮮食料品に赤札を張って値下げして売り切ろうとします。秋の味覚もこれと同じ原理で値段が下がっているのです。消費者としては、秋が深まって値段がもっと下がることを期待したいですね。

一方、逆に売り手の立場で物事を考えることも重要です。たとえばホタテです。消費者は価格の下落を歓迎します。しかし、生産者や仲買人など売り手にとっては、価格の下落は単純に歓迎すべきことではないのです。ホタテの場合、政府が支援措置を考えています。しかし、シャインマスカットやレンコン農家はどうなるのでしょうか。価格が下がっても、それ以上の売れる数量が増加すれば、売り上げは増加します。売り上げが増加するかどうかが、売り手にとって歓迎すべき値下げかどうかを分ける最も重要な要因になります。概して歓迎されざる値下げが多いことから「豊作貧乏」という言葉さえあります。

豊作で供給が増えると値段が下がるのは世界共通です。最近は、旬の食材の値段がシーズン最盛期に向かって下がることを、良く知る外国人観光客が増えているようです。

(埼玉新聞 2023年11月20日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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