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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第40回 戦争と株価

中東で戦火が拡大していて心配ですね。

第五次中東戦争が懸念されている。

第五次ということは第四次まで実際にあったのですか。

全て戦後のイスラエルと近隣のイスラム教国家との戦争なんだ。

そうなんですね。

日本にもさまざまな影響が出る可能性がある。投資家はよくウォッチしているよ。

どんな影響が出るのか心配です。

10月7日にパレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃しました。イスラエル側では7千人もの人的被害が出ました。また、外国人を含む200人以上が人質として拉致されました。これに対し主に西側諸国の首脳は「ナチス以来の蛮行」として強く非難しました。

イスラエルのネタニヤフ政権は、挙国一致の戦時内閣を発足させ、ハマスに報復する方針を示しました。連日メディアでは爆撃など凄惨せいさんな映像が流されています。

中東問題は歴史的な経緯もあり複雑です。それが戦後に4度発生した中東戦争の背景にあります。中東戦争は、ユダヤ教の聖地エルサレムを首都とするイスラエルと、近隣のイスラム教の国家との戦争です。特に第四次中東戦争では、イスラム教の国家が団結してイスラエル、そしてイスラエルを支援する西側国家への対抗措置として原油を武器に使いました。中東には産油国が多く、団結して価格を引き上げたのです。これが石油ショックの始まりでした。石油ショックによって世界中で物価は高騰しました。そして、それは長い景気後退の始まりでもありました。

今回についても、イランやシリアがハマスに味方して参戦することで戦火が拡大することが懸念されています。近隣のエネルギー大国も巻き込まれて参戦ということになれば、石油ショックの再来もありうる情勢です。

紛争の最中にお金の話とは不謹慎かもしれませんが、株式の相場格言に「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」があります。イメージとしては、武器需要や破壊されるインフラなどの復興需要を当て込んだ考え方です。一つの事例として、日本は戦後復興の過程で朝鮮戦争の恩恵を受けました。

ただし、第五次中東戦争へと戦火が拡大し、原油価格が跳ね上がれば事情は変わります。アンテナを高く張って原油価格の他にもイスラエルの株価、通貨価値、国債に織り込まれる破綻確率、など複合的にウォッチすべき状況になっています。

※掲載紙面の内容に一部修正を加えています。
(埼玉新聞 2023年11月27日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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