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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第48回 漫画と文化経済

最近、漫画家の鳥山明さんが亡くなったと聞きました。

主要メディアではノーベル賞作家が死去したかのような扱いだね。

鳥山さんの作品は何がすごいのですか。

漫画を芸術と文化にまで高めた面がある。海外でも人気は高く、死去のニュースは国家元首級の扱いだよ。

漫画は子供が読むものじゃないのですか?

今は違う。漫画のキャラクターは大きな経済効果をもたらす文化経済の一翼を担っているよ。

そうなのですね。

鳥山明さんは「ドラゴンボール」や「Dr.スランプ」の作者として知られています。これらは海外でも大ヒットしました。しかも、オリジナルの漫画のキャラクターがゲームや玩具やコスプレに取り入れられるなど広がりがありました。漫画家の地位は日本と海外で相当な差があります。日本では漫画家が一般的な呼称ですが、海外では「マンガ・アーティスト(漫画芸術家)」と表現されます。漫画は英語でアニメ、コミック、カートゥーンです。「マンガ・アーティスト」は、日本人にしか表現できない芸術感覚に対する尊敬の念を表す言葉だと思います。

漫画は日本の経済成長に大きく寄与しています。ゲームや玩具など漫画のキャラクターの売り上げ世界トップ10には、日本からポケモン、キティ、アンパンマン、マリオ、少年ジャンプの五つが入っています。米国からはくまのプーさん、ミッキーマウス、スターウォーズなど四つです。英国からはハリーポッター一つだけです。日本は最多の五つ、しかも世界1位はポケモン、2位はキティです。日本の漫画から始まるキャラクタービジネスは既に世界一です。日本の先の五つのキャラクターの累計総収益額は3020億ドル、約45兆円と巨額です。

かつて日本は貿易立国と呼ばれました。日本には資源がないため、海外から資源やエネルギーを輸入し、加工して付加価値をつけて輸出することで経済発展してきました。しかし、最近は輸出する対象物が電気機器などの工業製品からサービス輸出であるインバウンドやキャラクタービジネスへと変わっています。

文化庁は、文化と産業・観光業等が一体となって新たな価値を創出する「文化経済戦略」を推し進めています。文化芸術産業の経済規模を文化GDPと呼び2015年の8.8兆円から25年に18兆円とする目標を立てています。漫画は文化GDPの拡大に大いに寄与しているのです。

(埼玉新聞 2024年3月25日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からはNewsPicksプロピッカーとして「THE UPDATE」などに出演中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(経歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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