1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
最近、日本の株価が上昇しているようですが、なぜですか。
一言で言うと将来の日本経済の繫栄への期待だね。
でも、日本は人口が少なくなっていて、期待できないと聞いた気がします。
そういう見方もあるけど、昨今の日本企業は海外でも大いに稼いでいるからね。
日本の中では経済にとって何か良いことありましたか。
あった。しかも、日本の経済、政策、企業経営、経営者の意識、と多方面に拡がっている。
それは、うれしいニュースですね。
株価は将来の企業収益への期待を反映して形成されます。足元の日本企業の利益は過去最高水準にあります。株価の上昇は、好調な企業収益が将来も続く期待を反映していると理解できます。
日本の株価を取り巻く環境はここ数年で大きく変わりました。日本経済は、デフレの時代のコストカット型経済を脱して成長型経済への移行が始まりました。3月の日銀の利上げは、これを背景にしています。企業経営も大きく変わりました。長年の企業統治改革の成果が出たと見て良いと思います。ごく単純化して言うと、利益や配当など株主の期待に応えられない企業経営者は、株主総会で更迭される仕組みができました。経営者にとっては背水の陣ともいえます。政策も変わりました。経済産業省は「新機軸」という新しい概念を打ち出して政策を進めています。世界最大の半導体企業TSMCが3兆円を投資して熊本に工場を建設することを決めた背景はこの政策です。TSMCはほんの一例で、政府は他にも多くの戦略的な政策を打ち出しています。
企業経営が変わった背景には企業経営者の意識の変化があります。成長力がない守旧的な経営をやゆされて「伝統的日本企業」は、英語の頭文字を「JTC」と呼ばれてばかにされてきました。ところが、JTCから「破壊者」と称されるような変革志向の経営者が多く出始めたのです。米国企業を巨額で買収する方針を発表した日本の製鉄会社のトップは、「(当社)にとって大事なことは、わが国日本の成長を取り戻すこと。そのために死力を尽くす」と述べました。
日本が成長力を取り戻すためにまだ足りないのが日本人の意識変革です。確かに日本には人口減少や財政赤字など大きな問題があります。しかし、明日は今日よりも良くなる、良くするために努力する、という前向きな意識が日本人に回復することが、日本の未来を明るくする最後のピースになると思います。
(埼玉新聞 2024年4月22日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
(略歴)
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