1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金
街中で目をキラキラさせた新入社員の方をよく見かけます。
コロナ禍の間は目立たなかったから5年ぶりだね。
ニュースで新入社員の初任給が大幅アップといっていましたが、うらやましいです。
ほかにも休暇の増加など厚遇が目立つよ。それでもすぐ辞める人も多いらしいけどね。
たい焼きが好きなだけ買えるお給料をもらえるなら、ワタシは辞めずにがんばります!
今の時代にモーレツのような昭和の価値観は不適切だよ。
20歳前後の今年の新入社員はZ世代と呼ばれます。物心ついた時からスマホなどIT機器に親しんだことから、母国語のようにIT機器を使いこなします。ネットと接する時間が長いため、価値観は多様です。IT機器を使いこなしてコスパとタイパを徹底する合理的な思考と生活スタイルが身に付いています。若者に対し年上の世代が理解しがたい印象を持つのは世の常ですが、Z世代に対してはこの傾向が強くあります。何が不適切かの感覚も違います。
仕事に対する考え方も大きく異なります。転職は当たり前で、入社と同時に転職の候補先と比較して、すぐに見切りをつけます。転職の情報はネットとネットを通じた人脈を駆使して集めます。日本の会社にはまだ非合理な慣行が多くあります。コスパとタイパを重視するZ世代には、受け入れ難いと感じる人が多いようです。
Z世代は受けた教育も違います。学校教育では詰め込み教育から脱却して自主的な探求学習が重視されました。結果的に、偏差値だけを評価の軸としないため自己肯定感が高く、やる気、共感力、やり抜く力など非認知能力が高いと評価されています。もちろん人によって差はあります。
日本経済は失業者のいないほぼ完全雇用の状態にあります。そこで企業もZ世代を引き留めるために初任給の引き上げ、休暇の増加、社内で無料のお菓子やサラダの提供、希望する職種に配属されるようにコース別人事やジョブ型雇用などを実施しています。
日本企業は失われた30年の間にコストカットを優先して人への投資を怠りました。結果的にやっと経済が成長型に移行し始めても、すぐには適応できない事例が多くあります。課題の多くは企業の人事面に集中しています。働き方改革、キャリア自律、ワークライフバランス、幸福経営、リスキリング、人的資本の情報開示、組織カルチャー変革、などです。企業にとってZ世代への対応は、経営をコストカット型から成長型に移行するための試金石でもあるのです。
(埼玉新聞 2024年5月20日掲載)
1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。
(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)
(略歴)
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