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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第52回 日本の人口問題

日本の人口減少が話題になっていますね。

人口に関する大きなニュースが続けて出たからね。

人口が減ると何が問題なのですか?

経済が縮小して成り立たなくなる。買い物など生活インフラが維持できなくなる例も出始めている。

でも、それはずっと先の話ですよね?

買い物難民や自治体の破綻は既に起きている。

え、そうなのですか!?

今年に入り、人口減少に関する大きなニュースが三つ出ました。まずは2023年の人口推計です。10月時点での日本の人口は、59万5千人減って1億2119万3千人となりました。13年連続の減少で、出生数は過去最少でした。鳥取県の人口は約54万人です。鳥取県一つが消滅するほどの人口減少だったのです。

次に消滅する可能性のある自治体(消滅可能性都市)について、増田寛也元総務相が中心となって取りまとめた通称「増田レポート」の改訂版が発表されました。元々は14年に消滅可能性都市が899あるとの予測を出しました。10年たってどう変化したかを調査すると、744に減りました。ただ、減ったとはいえ人口減少は想定以上のペースで進んでいます。これまでの少子化対策は実を結んでいないのが実情です。

最後に、岸田政権は23年に3.6兆円の少子化対策を取りまとめました。そのうち1兆円が直接的な「こども・子育て支援金制度」として国民負担になる見込みです。26年から徴収が始まります。こども家庭庁によると負担額は月額で350~950円となる見込みです。

自治体の中には、これまでの少子化対策の結果が出て人口増加に転じた例もあります。成功事例に共通するのは、子育てしやすい環境や企業の工場進出など職場の提供です。また、その背景には、有効な対策を打たずに少子化が進んだらどんな末路が待っているのか、という危機感があります。この危機感を具現化する思考方法はバックキャスティングと呼ばれ、野球の大谷翔平選手が実践した目標達成のための「マンダラチャート」と発想は同じです。都市が消滅に向かうと、日常生活のためのインフラ、例えばコンビニエンスストアや食料品店などの店舗、薬局やクリーニングなどが採算的に成立しなくなるのです。

埼玉県からは16の市町村が消滅可能性都市に挙げられました。14年との比較では新たに2町が追加され7市町が脱しました。

(埼玉新聞 2024年5月27日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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