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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第53回 円相場と貿易立国

円安にはどんなメリットとデメリットがありますか。

最大のメリットは輸出品の海外での値下がりや外貨建て資産の値上がり、デメリットは輸入するエネルギーや食料品の値上がりかな。

やっぱりそうですか。最近、たい焼きの値段がまた上がったような気がしていました。

庶民にとっては円安で生活費が上がるデメリットが目立つよね。

メリットはないのですか。

輸出企業は業績が好調で、米国株式など外貨建て資産を持つ投資家は値上がり益が出ている。

メリットとデメリットを受ける人が分かれているように感じます。

その傾向はある。

それならワタシもたい焼きの輸出を始めたいです。

4月下旬に円/ドル相場は1990年以来の160円を超えて円安が進みました。3月末は151円台でしたので、約1カ月で10円近くも円安になりました。政府・日銀はゴールデンウィーク中に海外市場で円を買って円安を止める為替介入を実施しました。それでも円/ドル相場は155円前後にとどまっています。急激な円安は止まったものの、円高には戻っていません。

円安の原因は、直接的には日米の金利差です。政策金利中心値は、米国の5.375%に対して日本は0.05%です。5%以上の金利差は大きく、なかなか円安の是正が進まない状況です。

かつて日本は貿易立国と言われました。日本には資源がほとんど何もありません。こんな日本が国家として存続するには、海外からエネルギーと鉱物資源を輸入し、加工して輸出して貿易黒字を稼ぐことが立国の礎という考え方です。現に2000年ごろまでは日本は、自動車、電機、機械産業が世界を席巻して巨額の貿易黒字を稼ぎ出しました。しかし、近年はエネルギー価格と小麦など食料価格の上昇が大きく、貿易収支は赤字基調となっています。もはや貿易立国ではないという状況です。

問題は円安なのに日本からの輸出が増えない事実にあります。輸出が増えない原因は、電機産業をはじめとした日本の産業競争力の喪失です。中には自動車輸出のように好調な項目もあります。また、インバウンドも円安のおかげで好調です。それでも輸入の増加には追い付かないのです。昨今はインバウンドで来日した外国人が日本食のファンになり、食品の輸出が好調です。輸出の増強は円安を是正する有力な手段になると思います。

(埼玉新聞 2024年6月17日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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