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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第55回 成長戦略はどこへ行った

6月に政府の成長戦略が発表されて、「骨太の方針」とその実行計画が公表されたけど知っていた?

初めて知りました。

最近は注目度が下がったよね。

どういった内容なのですか?

賃上げを強化する方針がより明確になった。

賃上げということは、お給料があがるのですね。それはみんなにとってうれしいニュースですね。

政府は毎年6月ごろに「経済財政運営と改革の基本方針」、通称「骨太の方針」とその実行計画を閣議決定します。これらは政府の成長戦略とも呼ばれます。小泉政権の構造改革、安倍政権のアベノミクスもこうして実現されました。かつては、期待が大きく膨らんで株価を大きく持ち上げる材料になったこともありました。

しかし、岸田政権になって注目度は低下しました。岸田政権は、構造改革など従来型の経済成長では、格差や分断や地域社会の疲弊が進んだことから、方向転換を模索しました。そして「新しい資本主義」を掲げました。ただ、中身が何なのかあいまいなままでした。

2024年の骨太の方針は、「成長型の新たな経済ステージへの移行」を実現するため「デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンス」を生かして「社会課題解決をエンジンとした生産性向上と成長機会の拡大」とする方向性を示しました。実行計画では、人への投資、賃上げ、スタートアップ支援、労働市場改革、資産運用立国の推進を重視する方向性を示しました。政治資金の問題もあり目新しさに欠けた内容でしたが、賃上げを強化する方針は強調されています。

社会課題解決と経済成長の同時解決を具体例で示しましょう。日本はどこも人手不足ですが、技術の力で克服することは可能です。例えば、ファミリーレストランです。入店して着席してQRコードをスマホで読み込み料理を注文すると、配膳ロボットが運んできます。会計もQRコードを使うと店員との接触なしで全てが済む仕組みです。

このような例を介護や医療の現場で導入すれば、社会課題解決と経済成長が同時に実現できます。

日本は少子高齢化や過疎化の進展により、社会課題という意味で世界最先端の課題先進国です。逆に言うと、課題が大きく解決を迫られています。ピンチの後にチャンスあり、となるかどうかは今後の成長戦略の実行計画の進捗(しんちょく)次第です。やはり成長戦略は重要なのです。

(埼玉新聞 2024年7月15日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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