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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第56回 日本株に動意あり

最近、日経平均株価が上がっているようですね。

値上がりして一時期は4万2000円を超えたよ。

どうして株価が上がったのでしょうか。

日本経済の先行きや企業業績の回復、ガバナンス改革進展に対する期待だね。

良いことなのに、株価についてのニュースをあまり見ないですね。

高揚感はあまり感じられないね。

しばらく横ばい圏内だった日本株に動意(相場が動き始める気配)が生じました。7月11日に日経平均株価は4万2000円台と史上最高値を更新しました。ただ、その後は大きく反落しました。

動意が生じた背景は、まず景気の回復期待です。日本経済は今年に入って停滞感が強まっていました。原因は、物価上昇で消費意欲が減退、コロナ禍の巣ごもり期間中によく売れたテレビやパソコンなど電化製品の販売の反動減、自動車会社の不祥事による生産調整などです。しかし、特別減税や大幅な賃上げもあり、景気は底打ち感が出始めています。そうなると企業収益も上方修正に入ります。期初に企業が出した今年度の企業収益予想は4~5%の減益でした。しかし、直近は5~7%の増益見込みに上方修正されています。さらに大きいのはガバナンス改革の進展です。ガバナンス改革が進むと企業の経営内容が良くなると期待できます。本年度に入り、配当や自社株買いなど株主還元の増加、業績改善に向けた成長戦略の強化などガバナンス改革の進展が目立っています。

6月に集中した今年の株主総会では、経営陣に物言う株主であるアクティビストの活動が目立ちました。かつてアクティビストは利己的な強欲さからハゲタカと呼ばれました。しかし、最近は無料の経営コンサルタントとして経営改善の救世主というイメージが高まっています。

こうした期待を背景に積極的に日本株を買っているのが外国人投資家です。日本人による日本株への投資も増えてはいます。2024年6月の個人投資家数は1531万人、投資残高は160兆円でした。日本の株価上昇の恩恵を受けている日本人はまだ少数派なのです。

日本の企業経営者の間には、またデフレや不況の時代に逆戻りするという悲観的な見方が根強くあります。日本株への個人投資家数は、増加傾向ではありますが、まだ少数派です。日本株上昇の恩恵を受けるのは、日本人より外国人投資家という皮肉な構図になっているのです。

  • 掲載紙面の内容に一部修正を加えています。

(埼玉新聞 2024年7月29日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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