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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第58回 世界的な株価の乱高下

8月に入ってから、みなさん株価で大騒ぎしていると聞きました。

日経平均株価は5日に史上最大の下落、翌日には史上最大の上昇となったからね。

なんだか怖いですね。

こういう変動はまま起こる。

企業側が株価に影響するようなことを何かしたのでしょうか?

そうではないけれど、市場はムードで動くことがままある。

投資家はどうしたら良いのでしょうか。

8月に入って世界的に株価が急落に始まり乱高下しています。主な原因は3つあります。

一つは中東情勢です。7月31日にイスラエルはイランでハマスの最高幹部を殺害したと見られています。これを受けイランは報復を宣言、緊張感が高まっています。米国の野党共和党は第3次世界大戦の始まりだとして与党民主党の姿勢を批判しています。

次に米国の景気失速懸念です。8月上旬に米国で発表された景気指標が悪かったことから、景気が崖から落ちるように急激に悪くなる懸念が一気に高まりました。

最後に7月末の日銀の利上げです。円安が日本の物価を押し上げているとして、有力政治家が日銀に対し利上げを要求しました。そして日銀も、その要求に応えたと受け止められるような説明で、将来的にも利上げを続ける意向を示しました。

金融市場は将来に対する期待で価格が形成されます。その意味で、期待とは反対方向のサプライズが出ると、相場は急性発作のような反応をします。8月に入ってからの株価急落は、こうしたサプライズから始まりました。そして、市場には、急落すると売りが売りを呼ぶメカニズムが内在しています。投資家の中には、買った株式の相場が下がって、例えば20%など一定の範囲を超えると、強制的に売却するルールを持つ場合があります。投資信託を運用する機関投資家や信用取引をする個人投資家がこれに該当します。

さらにアルゴリズムで動くAIも大量の売り注文を出したと見られています。5日の日経平均株価の暴落はこうして起こりました。しかし、企業の収益性など実力を考慮しない過度な悲観による株価下落が行き過ぎだったことから、翌日に日経平均株価は史上最大の上昇幅を記録しました。その後も乱高下しつつ戻り傾向となっています。

最終的な世界の株価の行く末は、イラン情勢、米国景気、日銀の利上げ、の3つの要因がどう決着するか次第です。投資は長期分散を基本に相場格言「飛びつく魚は釣られる」を教訓とすべき局面だと思います。

※掲載紙面の内容に一部修正を加えています。
(埼玉新聞 2024年8月26日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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