スマホ用ページはこちら

やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第64回 トランプ大統領再選

米国の大統領選挙は、なかなか決まらず訴訟合戦で泥沼化する可能性もあったけど、あっさりトランプ候補に決まったよ。

そうなのですね。世界のみんなに何か影響はありますか?

株価上昇、ドル高円安など米国にとって良い兆しが強く出ている。

良いことばかりなのですね。

いや、そんなことはない。公約には関税引き上げなど世界経済を下押しする要因も多く懸念もある。

それは、困ります…。

11月5日に米国で大統領議会選挙が実施されました。大統領は共和党のトランプ候補、上院は共和党の過半数以上が確定しました。下院でも共和党が優勢です。トランプ候補は得票率でも50%を超える見込みで激戦とされる7つの州すべてを制しました。全般的に保守政党である共和党の優位が示されました。

これを受けて金融市場は、共和党の公約が実現する可能性が高まったことからすぐに反応しました。まず株高です。トランプ氏の公約は景気を強く刺激する項目が多いことから、景気拡大への期待が強まりました。法人税率は21%から15%に引き下げることを公約としています。法人税減税は直接的に株価を押し上げます。同じ企業での税率の違いで増益になるからです。この減税で企業収益は約8%の増益になると見込まれます。言い換えると株価を8%押し上げる要因になり得るのです。次に金利が上昇しました。減税の規模が大きく、景気拡大への期待が強まったからです。さらにドル高です。米国経済が強い、そして金利の上昇となれば米国に資金が流入しやすくなります。これを見越してドル高となりました。

経済的には規制緩和への期待も強くあります。しかも、電気自動車(EV)で有名なテスラ創業者のイーロン・マスク氏が新たに設置する政府組織のトップに就任して陣頭指揮する見込みです。

ただし、良いことばかりではありません。懸念も多くあるのです。最も懸念されているのは公約である関税の引き上げです。これは米国への輸出国の経済に打撃を与え、米国の物価を押し上げるリスクがあります。また、米国社会の分断が一段と深刻化するリスク、中東での戦闘が激化するリスク、不法移民を送還することで国際的な摩擦が高まるリスク、などもあります。

覇権国米国との関係は日本の国益に直結します。石破総理がトランプ大統領と良好な関係を築くことを期待したいですね。

(埼玉新聞 2024年11月25日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

黒瀬レポートはこちら

(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

〈当資料に関するご留意事項〉

  • 当資料は、投資環境や投資に関する一般的事項についてお伝えすることを目的にりそなアセットマネジメント株式会社が作成した情報提供資料です。
  • 当資料は、投資勧誘に使用することを想定して作成したものではありません。
  • 当資料は、当社が信頼できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
  • 運用実績および市場環境の分析等の記載内容は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果および市場環境等を示唆・保証するものではありません。
  • りそなアセットマネジメント株式会社が設定・運用するファンドにおける投資判断がこれらの見解にもとづくものとは限りません。
  • 当資料に指数・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権、その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料の記載内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。