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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第73回 賃金と物価の好循環

この間、スーパーのタイムセールに行ったら、色々な物の値段がまた上がっていました。

そうだね、企業の事前アナウンスも多かったしね。

事前アナウンスなんてありましたか。

ビールはあった。

ワタシはビールより牛乳の値段が気になります。

4月以降の値上げは加工食品やサービスで目立つよ。

4月に入って値上げが顕著です。3月までは生鮮食料品が中心でした。4月以降は加工食品やサービス価格の上昇が目立ちます。原因は人件費、エネルギー代、原材料など多くのコストが上がったことです。もう毎年のように上がるため、企業が値上げを発表しても、必ずしもメディアで報道されないケースも増えています。

一方、春闘の結果を踏まえ、4月以降はやや大きな賃上げが期待できそうです。賃金で大事なのは実質賃金です。これは、賃金の伸び率から物価の伸び率を差し引いて計算します。昨年は、賃上げ率は高かったものの物価はそれ以上に上がったため、実質賃金はマイナスでした。多くの人があまり賃上げの実感がなかったのは、統計的にも正しかったのです。しかし、2025年度以降は実質賃金がプラス転換すると期待されています。言い換えると、やっと賃上げが実感できるようになりそうなのです。

近年、賃金と物価が上がり始めたことから、日銀は企業にアンケート調査を実施しました。企業サイドは、賃金と物価がともに上がる状態について、約7割もが好ましいと答えています。それは企業経営としては、値上げは創意工夫が活かせるチャンスでもあると答えていることを意味します。

この傾向は特にサービス業や飲食業で顕著です。値上げしても逆に顧客の満足度は高まる場合があるのです。こうなると、賃上げも可能になるので従業員満足度も上がり、利益も出やすくなるため株主や取引先など周辺の企業でも満足度も上がります。これがいわゆる生産性の向上です。さらに、そういう生産性の高い企業が創意工夫をしないために経営が苦しくなる企業を買収して、好循環が広がる例も増えています。言い方を変えると、10年ほど前から言われてきた賃金と物価の好循環がやっと実現しつつあるのです。

値上がりはしたけれども消費者として満足度が上がる、こういう消費行動をするのが得策な時代なのかもしれません。日本のサービス業や飲食業がインバウンドの外国人に大人気な秘密もここにあると思います。

  • 掲載紙面の内容に一部修正を加えています。

(埼玉新聞 2025年4月14日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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