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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第77回 長期金利上昇

超長期という聞きなれない金利が大きく上がっている。

超長期金利ですか。それは、ワタシたちにも何か影響はありますか?

場合によっては住宅ローン金利に関係することもある。

銀行に預けているお金はどうですか?

預金金利にはあまり関係ないかな。

そうなのですか。お金が増えれば、たい焼きがたくさん買えると思ったのですが…

長期金利と言えば通例は10年国債の金利です。他方、最近金利が大きく上昇したのは超長期国債と呼ばれる償還までの期間が20年以上などもっと長い国債の金利です。3月末と直近を比較すると、政策金利は0.5%で変化なし、10年国債の金利は約1.5%で大きな変化はなし、20年国債の金利は約2.2%から2.5%へと約0.3%上昇しました。30年国債や40年国債の金利はもっと大きく上昇しています。もし超長期の金利がもう一段上昇すれば、10年国債の金利も引っ張られて上昇する可能性があり、注意が必要な情勢です。

10年国債の金利が上昇すると、固定型住宅ローン金利や企業向け貸出金利が連動して上がりやすくなります。一方、預金金利は、例えば定期預金でも1年や2年などもっと期間が短いため、日銀が決定する政策金利の動向を反映します。日銀はトランプ関税の影響で景気が下振れするリスクがあることから追加の利上げには慎重な姿勢を示しています。

問題は、超長期金利が上昇した背景です。昨年10月の衆議院選挙で自公政権は過半数を割って少数与党となりました。政権運営のためには野党の要求を飲まざるを得ないのです。今年度予算では国民民主党の要求を飲んで「年収の壁」を引き上げる所得税減税、維新の要求を飲んで「高校授業料の軽減」などを実施しました。そして7月には参議院議員選挙があります。選挙を前に野党が消費税の減税や廃止などを要求しています。自公政権が政権運営のためにこうした野党の要求を飲むと財政がどんどん悪化するのではないかという懸念が超長期金利上昇の背景にあります。

思い起こせば昨年の7月ごろに政府は国民一人当たり原則的に4万円の定額減税を実施しました。お金の流れに色はありませんが、原資はほぼ赤字国債です。あれから約1年が経ち、「ぜひもう一度巨額の減税を」というムードになっていると思われます。超長期金利の上昇は「財政によるバラマキは打ち出の小槌ではない」と警告を発しているとも見られています。

(埼玉新聞 2025年6月16日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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