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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第78回 防衛関連株が高騰

サーブ、レオナルド、タレス、何か分かるかな。

何か全くわからないです…。

最近、株価が高騰する欧州の防衛関連企業の名前だよ。

そうなのですね。

中東や東欧でミサイルやドローンが飛び交う戦闘が起きているってニュースされているけど、それと関係があるんだ。

それは悲しいニュースですね。株価が上がってもワタシは喜べません。

確かにそうだ。しかし、世の中の受け止め方が変わり始めている一面もあるんだ。

最近の世界的な傾向として防衛関連企業の株価が大きく上がっています。冒頭で挙げた3社以外でもドイツの戦車メーカーとして有名な「ラインメタル」、英国の戦闘機メーカーとして有名な「BAEシステムズ」の株価も高騰しています。この傾向は日本の「防衛関連株御三家」である「三菱重工」「川崎重工」「IHI」にも当てはまります。

世界的に防衛関連企業の株価が高騰した背景は主に二つあります。一つは米国が同盟国に防衛費負担の大幅な増加を強く求めたことです。米国トランプ政権は、米国の防衛費負担が突出して重い一方、欧州やアジアの同盟国は軽すぎるとして是正を求めてきました。その結果、欧州やアジアの同盟国は防衛費を大幅に増加させる方向性となりました。これにより防衛関連企業は売上と利益が大幅に増加する見通しが高まり、株価を押し上げる要因となりました。
もう一つは、ウクライナや中東などで実際に戦闘が顕著に増加し、テレビなどの映像でお茶の間に流れたことです。これを受けて各国とも国民が万が一への備えに理解を示し始めました。万が一は、必ずしも戦争の準備というわけではありません。真逆の戦争をしないための抑止力の側面もあるのです。

かつて武器弾薬の製造や販売は「死の商人」と呼ばれました。商売繁盛が戦争や戦闘による死者の増加を意味するからです。しかし、最近はニュアンスが変わっています。防衛力を強化することが戦闘や戦争を事前に防止する抑止力になるという考え方からです。これと軌を一にして機関投資家の考え方も変わり始めています。かつては死の商人の側面を持つ企業への投資は、社会貢献ではないという考え方から手控えられる傾向がありました。しかし昨今は抑止力も含め「祖国防衛のための防衛装備品を製造する企業への投資なら問題はない」というように認識が変わっています。

昨今の防衛関連企業の株価動向には国際関係をめぐる情勢変化が如実に表れているのです。

  • 掲載紙面の内容に一部修正を加えています。

(埼玉新聞 2025年6月30日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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