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やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第84回 令和の流通革命

物の値段が高いとなかなか買い物する気になりません…。

流通業界は二極化していて、買う気が刺激される店もあるよ。

楽しい買い物ができるお店ですか。

そう、そういう企業は売り上げも業績も好調だよ。

行ってみたいです。

現場で創意工夫が行われていて、そういう店では働き方改革が実現されている場合も多いんだ。

何だか新しい体験ができそうですね。

流通革命という言葉は昭和世代には懐かしいと思います。それまでの小売業は、商店街で主に個人商店が魚屋や八百屋を営んでいました。しかし、1970年代ごろからチェーンストア化が始まりました。ダイエーやイトーヨーカドーのような大規模資本が大型ビルでチェーン店を展開し始めたのです。近代的なビル、明るく手に取りやすい陳列、大規模一括仕入れによる安値販売、会計が一カ所で済む利便性などが売り物でした。流通革命により昭和から平成にかけての小売業はがらりと風景を変えました。

商店街での買い物は、人と人との触れ合いの場でもあり、温かいものでした。個人商店の店主はお客さまの顔と名前や家族構成までを知っており、言葉を交わす楽しみもありました。しかし、流通革命によって個人商店の数は激減し、商店街そのものも衰退しました。

そして今、令和の流通革命とでも呼べる変革が起きています。昭和時代のチェーンストアの強みは、大規模な一括仕入れによる安値販売でした。言い換えれば、どこの店に行っても同じものが同じ値段で均一に売られているのです。売り場の店員さんは本部の指示に従って売るだけでした。
しかし、令和時代になってかつての強みが弱みへと変わり始めました。地域や家族構成やライフスタイルによって客の趣向は違います。チェーンストアの得意とする均一性では、社会の変化に対応できなくなり始めたのです。

この変化に適応して令和の流通革命では、地域ごとの実情に合わせて現場が人工知能(AI)とITを駆使して創意工夫をし始めたのです。本部主導から現場主導への転換です。働き方としても、受動的に本部の指示に従うのではなく、能動的に自らの現場目線で創意工夫を始めたのです。こうしてお客さまに高い体験価値をもたらすようになりました。

令和の流通革命で小売業界の序列には地殻変動が起きています。埼玉県にはその意味で優良企業が多くあります。日常の買い物でも、売場の変化をよく見れば、新鮮な発見があると思います。

(埼玉新聞 2025年9月22日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

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(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

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