スマホ用ページはこちら

やさしく解説 “りそにゃ”のお金のギモン 人生100年時代の生活とお金

第99回 経済と社会のレジリエンス

イランについてのニュースをよく見ますが、何か影響はありますか?

近年の金融市場は多くのショックを乗り越えた実績があるから、市場は楽観的かな。

多くのショックとは何ですか。

コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争、高インフレ、トランプ関税などかな。

確かにみんな大騒ぎしていましたね。

後から振り返れば、大きなショックがあっても景気は総じて安定、株価など金融市場の調整も短期間で済んだ。

2020年以降のショックによる経済への逆風は非常に大きなものでした。コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争、その後の原油価格急騰と高インフレ、インフレ鎮静化のための大幅な利上げ、昨年のトランプ関税などです。これらは戦後経済史に残るショックと比較しても相対的に大きなものでした。それでも経済は大きな後退に至らず、概ね成長路線を維持しました。結果的に世界の株価など金融市場の調整は総じて短期の浅いものでした。

この背景には世界経済のレジリエンスがあります。レジリエンスは「復元力や回復力」と訳されます。ショックによる下押し圧力を受けても跳ね返して元に戻る力という意味合いです。これは人間も同じです。大きなショックがあっても、平気な人もいれば、落ち込んでなかなか立ち直れない人もいます。昨今の世界経済には大きなショックがあっても大きくは落ち込まない傾向があるのです。

理由は大きく分けて三つあります。金融政策では、量的緩和など大胆かつ機動的な対応が功を奏しました。財政政策では、政府が大きな財政赤字をタブー視せず、景気を支えるため積極的な政策対応を実施しました。ただし、後世に財政赤字を残すという意味では問題先送りの面はあります。最後に企業部門の値上げを含むサプライチェーンマネジメントの変化への適応です。これにより市場経済の調整メカニズムが上手く機能するようになったと見られます。

レジリエンス教育が重要視されて普及した効果も見逃せません。これは天災や事故やショックに対し、落ち込まずに早く回復するための教育です。レジリエンス教育は個人の心の持ちようだけではなく、社会全体を包含するシステムとして事前防止や迅速な正常化や早期復興など行政や地域や産業を巻き込んで進められました。

イラン情勢について、まだ大きなリスクが残っています。ただ、ショックに対し委縮するのではなく、仔細にその正体を見定めて、前向きに対応することが求められています。

(埼玉新聞 2026年5月18日掲載)

チーフ・エコノミスト/チーフ・ストラテジスト 
黒瀬 浩一

黒瀬浩一

1999年より20年以上にわたり、エコノミスト/ストラテジストとして資産運用業務に一貫して従事。「りそなの顔」としてBSテレビ東京「日経+9」、日経CNBC「昼エクスプレス」等のレギュラーコメンテーターを務めるなど、情報メディアへの執筆・出演も多数。2023年からNewsPicksプロピッカーに就任。資産形成Webメディア「finasee(フィナシー)」にコラムを連載中。

(著書)
「時代の「見えない危機」を読む ――迷走する市場の着地点はどこか」(2020年、慶應義塾大学出版会)

黒瀬レポートはこちら

(略歴)

  • ―1987年 慶応義塾大学 商学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行
  • ―1990年 ダイワ・オーバーシーズ・ファイナンス(香港)を皮切りに一貫して証券投資業務に従事
  • ―1996年 公益財団法人国際金融情報センターで米国担当シニアエコノミストに従事
  • ―1999年 信託財産運用部(現りそなアセットマネジメント株式会社)にて、一貫してエコノミスト、ストラテジスト業務に従事

〈当資料に関するご留意事項〉

  • 当資料は、投資環境や投資に関する一般的事項についてお伝えすることを目的にりそなアセットマネジメント株式会社が作成した情報提供資料です。
  • 当資料は、投資勧誘に使用することを想定して作成したものではありません。
  • 当資料は、当社が信頼できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
  • 運用実績および市場環境の分析等の記載内容は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果および市場環境等を示唆・保証するものではありません。
  • りそなアセットマネジメント株式会社が設定・運用するファンドにおける投資判断がこれらの見解にもとづくものとは限りません。
  • 当資料に指数・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権、その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料の記載内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。